発言力増すグローバルサウス 中核インド、実利狙う―取り込み図るG7
2023年05月18日07時07分
【ニューデリー時事】先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)の招待国インドは日米欧とロシア・中国のいずれの陣営にもくみせず、実利を追求している。インドを筆頭とする「グローバルサウス」と呼ばれる新興・途上国は、自陣営への引き込みを目指す大国からの働き掛けが強まる中、その発言力を増している。
インドは20カ国・地域(G20)の議長国。1月には、気候変動やエネルギー・食料安全保障といった途上国の懸念を共有するオンライン会議を初開催した。「グローバルサウスの声サミット」と題したこの会議で、モディ首相は「途上国の発言権を高める」と力を込めた。
G7議長国の日本は、インドに呼応した。岸田文雄首相は3月、同国を訪問してモディ氏と会談し、途上国が直面する課題への対応で連携を強化する方針で一致。モディ氏を広島サミットに招待した。
ただ、インドは気候変動問題などで先進国と異なる立場を取り、中でもロシアによるウクライナ侵攻への対応では溝がある。ロシアと伝統的な友好関係を築き、中ロを中核とする上海協力機構(SCO)の加盟国でもあるインドは、G7主導の対ロシア制裁に同調していない。制裁強化は広島サミットの主要議題となるが、インドがG7と完全に足並みをそろえるとは考えにくい。
背景にあるのは、独自の経済・安全保障上の計算だ。侵攻以降、インドは西側の制裁をよそに割安なロシア産原油の輸入を拡大。インド国営銀行の調査によると、昨年度の原油輸入総量に占めるロシア産の割合は前年度比で約10倍に増えた。
インドはまた、兵器調達の約6割をロシアに依存しており、中国と国境紛争を抱える中で、国防戦略上ロシアとの関係維持が不可欠だ。インドと並ぶ「グローバルサウス」の代表格と目され、ロシアに肥料の多くを依存する農業大国ブラジルや、ロシアへの武器・弾薬供与を指摘される南アフリカも、制裁には批判的だ。
インドのティルムルティ前国連大使は対ロ制裁について、途上国に大きな打撃を与えていると指摘。ロシアを非難する国連総会決議の採択で多くの途上国が棄権を選んだことにも触れ、「これ以上苦しみを増やすことなく、当事国同士を話し合いのテーブルに着かせることが(紛争解決の)回答になる」と強調した。