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市川猿之助、明治座で「歌舞伎レビュー」 千秋楽は中村隼人主演の“新人公演”

2023年05月15日17時30分

「不死鳥よ波濤を越えて」で不死鳥となって天翔けていく平知盛(市川猿之助)(撮影・松竹)

「不死鳥よ波濤を越えて」で不死鳥となって天翔けていく平知盛(市川猿之助)(撮影・松竹)

  • 「御贔屓繋馬」で傾城薄雲を演じる市川猿之助(左)と源頼光を演じる中村隼人。千秋楽では役を入れ替わる(撮影・松竹)
  • 「若い人に今、役を付けておくと、20年後ぐらいに助かると思う。備えあれば憂いなし」と話す市川猿之助(右)と「猿之助兄さんのいい画材になれるよう研究したい」と言う中村隼人=東京

 歌舞伎俳優の市川猿之助が、東京・明治座で上演中の「市川猿之助奮闘歌舞伎公演」で得意の宙乗り、早替わりに加え、歌にも挑戦し、公演タイトル通りの大奮闘を見せている。

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 昼の部は宝塚レビューとスーパー歌舞伎を合わせたような「不死鳥よ波濤(はとう)を越えて―平家物語異聞―」。夜の部は、歌舞伎らしいスペクタクルな仕掛けがいっぱいの復活狂言「御贔屓繋馬(ごひいきつなぎうま)」。中村隼人ら期待の若手を大役に抜てきし、後進の育成にも心を砕く。「芝居は主役だけでなく脇が良くないといけない。いい絵を作るためのいい材料になってほしい」と期待を込める。

 「不死鳥よ―」は、市川猿翁が「(歌舞伎で)宝塚をやりたい」と、宝塚歌劇団の代表作「ベルサイユのばら」を手掛けた植田紳爾に作・演出を依頼し、1979年に初演された。壇ノ浦の戦いで死んだはずの平知盛(猿之助)が海を渡って幻の都・楼蘭に落ち延び、再起を試みるという奇想天外なストーリーだ。

 桜が満開の厳島神社での平家の華やかな宴(うたげ)の場面は、宝塚の日本物レビューのよう。異国の地で命を落とした知盛が、真っ白い衣装で不死鳥となって天翔(あまが)けていくさまはスーパー歌舞伎「ヤマトタケル」さながらだ。初演では役者は歌わず、コーラスを入れたが、今回は冒頭で猿之助がせり上がりで登場して歌うほか、ミュージカルに出演経験のある市川猿弥や、元劇団四季の下村青が美声を聞かせる。

 猿之助は「男宝塚です。植田先生には人づてに『知盛が中国に渡っても、日本人の魂で死んでいくというところを大事にしてほしい』と言われました」と説明する。

 隼人は、壇ノ浦で知盛を助ける宋の水軍の将、楊乾竜を演じている。初演では猿之助の父、市川段四郎が務めた役だ。隼人は「知盛と心を通わせ、もう一度ひと花咲かせてやろうと考えている人物。自分も今年で30歳。大人の役者として芝居の核となる知盛を支えるような芝居をしたい」と言う。

 「御贔屓繋馬」は鶴屋南北の2作品をつないだ作品で、84年に明治座で復活上演された。父・平将門の無念を晴らそうとしながら志半ばで病死した遺児、相馬太郎良門が、天下を狙って蘇生する物語が描かれる。最後に「蜘蛛の絲宿直噺(くものいとおよづめばなし)」という所作事(舞踊)が付き、猿之助は女童、小姓、番頭新造、太鼓持、傾城、土蜘蛛の精の6役を早替わりで踊り分ける。

 千秋楽の28日は花形公演として昼夜とも「御贔屓―」を上演し、隼人が猿之助と役を替わる。かつて猿翁が明治座で奮闘公演を行っていた時、千秋楽に催していた「待春会」という名の勉強会にならったもので、宝塚の新人公演のような趣向だ。猿之助は「世代交代するつもりは毛頭ないけれども、自分が一番いい状態の時に、そばで見ておいてほしい。伝統芸能は長年かけて教えるものだから、これがスタートだと思っている」と狙いを語る。

 受けて立つ隼人の課題は6~7年ぶりとなる女形だとか。猿之助は、隼人の父・中村錦之助や、大叔父に当たる萬屋錦之介も若手時代に女形で成果を上げていたことを引き合いに、「でくの坊になっちゃうのか、ちゃんとした女形になるのか」と挑発。隼人は女形を演じていなかった間の自身の成長に期待も込めつつ、「頑張ります!」と笑顔で語った。(時事通信社・中村正子)

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