地震被災地の逆風限定的 現職優位の一因に―トルコ大統領選
2023年05月15日20時30分
【イスタンブール時事】14日投開票されたトルコ大統領選挙では、現職のエルドアン氏が野党統一候補のクルチダルオール氏に対して得票率で優位に立った。2月に起きた大地震を巡るエルドアン政権に対する批判が限定的で、被災地での人気はエルドアン氏がクルチダルオール氏を大きく上回ったこともその一因とみられる。
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地震では5万人を超える死者が出ており、政権への逆風が強まっているとの見方もあった。しかし実際のところ、エルドアン氏は地震で特に深刻な被害が出た南部や南東部の被災地のうち、ハタイ県でクルチダルオール氏に僅差で敗れたものの、カフラマンマラシュ、ガジアンテプ、アドゥヤマン、マラティヤ各県で圧勝した。
被災地で人々に話を聞くと、地震発生当初は「エルドアン政権の初動の遅れが人的被害の拡大につながった」(ハタイ県の52歳女性)といった非難の声が多かった。しかし、現地で家を失った人への仮設住宅の建設などが進むと「政権の復興努力への評価」を口にする住民も目立ち始めた。
ガジアンテプ県で被災したスレイマン・チェリクさん(55)は「復興に向けたエルドアン氏の取り組みを信頼している。経験が乏しい野党側に同じことができるとは思えない」と語った。
また、被災各県はもともと保守的な住民が多く、南東部を中心に武装闘争を続けてきたクルド人勢力に対する反感が強いという土壌も影響したもようだ。クルチダルオール氏は今回の選挙で「反エルドアン」で一致するクルド系政党の支援を受けており、住民からは「クルチダルオール氏が政権を握ったらトルコはおしまいだ」(ガジアンテプ県の45歳女性)という極端な主張も聞かれた。