経済対策、与野党でバラマキ 公約の実現疑問視も―タイ総選挙
2023年05月14日07時19分
【バンコク時事】今回のタイの総選挙では、有権者の関心は物価高などを背景とした経済対策に集まった。しかし、与野党が示した公約はバラマキ合戦となり、実現が疑問視されるものもある。
タイ経済や市民生活は新型コロナウイルスの感染拡大やエネルギー価格の上昇などで打撃を受けた。各党の集会に参加した支持者の多くも経済対策を期待していた。
これに応える形で、最大野党「タイ貢献党」は16歳以上の全国民に1万バーツ(約4万円)のデジタル通貨を給付する案などを公表。野党第2党の「前進党」は、最低賃金を現在より2~3割引き上げ1日450バーツ(約1800円)とする公約を掲げた。
与党側も、現職のプラユット首相が参加する「タイ団結国家建設党」やプラウィット副首相が党首の「国民国家の力党」は低所得者支援の拡充を表明した。アヌティン副首相兼保健相が党首の「タイ誇り党」は、放射線がん治療と人工透析の無料化を打ち出した。
しかし、民間シンクタンク「タイ開発研究所」は今月、貢献党や誇り党の公約実現にはともに1兆7000億バーツ(約6兆8000億円)以上の費用が必要という試算を公表。「過剰な財政支出で公的債務が拡大する可能性がある。税収増を財源としているが、経済成長を過大評価している」と批判した。
最低賃金の引き上げについて、タイに進出する日系企業関係者は「影響が大きく、注視している」と明かす。ただ、「企業には別のインセンティブが用意される可能性があり、大きくは心配していない」と話す別の関係者もいた。