上場企業、23年3月期業績堅調 コロナ緩和、円安追い風―海外景気減速に懸念も
2023年05月11日18時57分
企業業績が堅調だ。発表がピークを迎えた上場企業の2023年3月期決算は、新型コロナウイルスに対する規制の緩和を背景に、旅客やレジャー、百貨店など非製造業部門が急回復。円安の進行は、輸出を中心に製造業にも追い風となっている。24年3月期も経済の正常化が収益を支えるとみられるが、急激な金融引き締めに伴う海外の景気減速など懸念材料は少なくない。
◇ディズニー利益10倍に
SMBC日興証券が旧東証1部市場上場企業を中心に集計した結果、10日時点(開示率35.4%)で23年3月期の純利益は全体で前期比7.0%増となった。最終的にも小幅増益、金額ベースでは過去最高水準で着地する見通しだ。
好調が際立つのは非製造業で、24.5%増加。航空・鉄道の主要各社は3年ぶりに黒字転換し、「人の移動が活発化し、観光が力強く回復している」(JR東海の丹羽俊介社長)と明るさを取り戻した。
東京ディズニーランドなどを運営するオリエンタルランドは、訪日客の増加などを受け純利益が約10倍に膨らんだ。百貨店も「(高額品の)売り上げが非常に高い伸び率」(三越伊勢丹ホールディングスの細谷敏幸社長)で、純利益が2.6倍となった。
製造業は2.6%減。トヨタ自動車は1兆円超の円安効果があったものの、原材料費の高騰を相殺できず4期ぶりの減益となった。一方、三菱自動車の純利益は4年ぶりに過去最高を更新。「円安で大幅に改善」(池谷光司副社長)した。
また、ソニーグループは円安のほか、ゲーム事業や音楽事業が好調で、売上高が初めて10兆円を突破。物流網の混乱沈静化などを背景に、家庭用ゲーム機「プレイステーション(PS)5」の販売台数も想定を上回った。
◇価格転嫁カギ
SMBC日興によると、24年3月期の純利益予想の合計は10日時点で8.4%減だが、最終的には小幅増益となる見通し。経済の正常化や半導体不足の解消、原材料高の一服などにより、今年度も「堅調さを維持する」(安田光チーフ株式ストラテジスト)とみられ、トヨタが過去最高となる3兆円の営業利益を予想するなど、企業側には強気の見方も目立つ。
ただ、先行きに関しては「米国の景気動向が注目」(ソニーグループの十時裕樹社長)、「包装材や塩などの価格高騰の影響が今年度に効いてくる」(キッコーマンの中野祥三郎社長)といった懸念も根強い。
大和証券の阿部健児チーフストラテジストは、米中の景気減速や金融情勢の悪化などが下振れリスクだと指摘。その上で「企業はコロナ後の経済や消費者動向の変化を的確に捉えるとともに、利益率が低い事業のコスト削減や価格転嫁への工夫などが求められる」としている。