ロシア、旧ソ連「血の結束」誇示 孤立回避、プーチン氏が首脳招集
2023年05月11日07時06分
ロシアのプーチン大統領は、モスクワの「赤の広場」で9日に催された対ドイツ戦勝記念行事に、独立国家共同体(CIS)各国の首脳を急きょ招待した。ロシアが隣国に牙をむいたウクライナ侵攻で旧ソ連圏に動揺が広がる中、第2次大戦で約2000万人の犠牲者を出した往年の大国の「血の結束」をアピールした。
和解から敵視へ 変わるロシア戦勝記念日―プーチン氏が政治利用
航空機パレードや公式レセプションの中止が事前に報じられた今年の記念日。各国首脳の訪ロで雰囲気が変わり、ロシア国営テレビは朝食会を含む慌ただしい「戦勝外交」を放映した。
記念行事に当初から首脳が参加を予定していたのはキルギスのみ。報道を総合すると、プーチン氏は公式・非公式な電話会談で、CIS各国首脳に「招集」をかけたとみられる。侵攻に伴う対ロシア制裁や国際刑事裁判所(ICC)の逮捕状が重くのし掛かる中、自国民に孤立のイメージを持たれるのは避けたかったようだ。
プーチン氏は演説で「CIS各国首脳が集まったのは重要だ。(旧ソ連国民)全員が勝利に貢献した」と謝意を表明。アルメニア、ベラルーシ、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタンの首脳は行事に付き添った。
中でも目立ったのは、全首脳が参加した中央アジア5カ国。ユーラシアの地政学上の要衝で、中国が巨大経済圏構想「一帯一路」の観点から熱い視線を送る。戦争に伴う旧ソ連圏の動揺は、ロシアと微妙な距離を生みかねず、勢力圏に引き留めるのはプーチン政権の優先課題と言える。
中国は今月18、19の両日、中央アジア5カ国と首脳会議を開催する。中ロは戦略的パートナーシップを深めるものの、中央アジアを巡って水面下で綱引きを演じている。米シンクタンクの戦争研究所は8日、「プーチン氏は軍事パレードを中央アジアへの影響力誇示に利用しようとしている」と指摘した。