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和解から敵視へ 変わるロシア戦勝記念日―プーチン氏が政治利用

2023年05月10日12時06分

「赤の広場」で行われた軍事パレードで、演説するプーチン大統領(手前)=9日、ロシア・モスクワ(EPA時事)

「赤の広場」で行われた軍事パレードで、演説するプーチン大統領(手前)=9日、ロシア・モスクワ(EPA時事)

 ロシアは9日、旧ソ連の対ドイツ戦勝78年記念日を迎えた。モスクワの「赤の広場」で恒例となった軍事パレードは、ソ連時代に11月の革命記念日に行われたものを、ソ連崩壊後に戦勝記念日に移した「国威発揚行事」。国民の愛国心を支持率の糧とするプーチン政権は、ウクライナ侵攻後もこの日を積極的に政治利用している。

プーチン氏、赤の広場で演説 「本物の戦争」祖国防衛訴え―ウクライナのドローン警戒

 ◇不戦の思い
 「二度と繰り返さない」「また戦っても勝てる」。旧ソ連圏では2000万人以上が犠牲になった第2次世界大戦を振り返る際、どちらのスローガンを強調するかで常に論争になってきた。
 ロシアによって2014年、クリミア半島を奪われたウクライナは「反戦」に重きを置き、侵略に抗議してきた。一方、プーチン政権は欧米を敵視するあまり、近年の軍事パレードを威嚇の機会に利用。自分たちが「正義」であり「勝者」だという歴史観と重ね合わせながら、昨年2月からの侵攻に突入した。
 05年の戦勝60年記念行事は、当時のブッシュ米大統領、シュレーダー独首相、小泉純一郎首相らが一堂に会し、和解を演出。08年のジョージア(グルジア)紛争やクリミア半島併合後は、出席する外国首脳が減った。プーチン政権は、共に戦った旧連合国を含む欧米を「ナチス」呼ばわりするようになり、今年は外国メディアの現地取材を制限した。
 ◇泥沼の侵攻
 9日の軍事パレードは、ウクライナ侵攻に参加する兵士や装備が登場。政府系紙によると、目玉は「実戦」を踏まえて改良・開発した装甲車で、戦時色がますます強くなった。大陸間弾道ミサイル(ICBM)を誇示し、核兵器で威嚇するのはいつも通りだ。
 ただ「戦勝」を強調する行事に、ロシアの劣勢が影を落としている。ウクライナと国境を接する各州の軍事パレードは軒並み中止。モスクワでは「自作自演」説がくすぶるクレムリン(大統領府)へのドローン攻撃があり、祖国防衛の意識を高めるどころか、保守派に衝撃を与えた。
 プーチン政権は、泥沼化した旧ソ連のアフガニスタン侵攻(1979~89年)の教訓には目を背ける。独立系メディアは最近、ソ連時代に報じられなかった当時の反戦運動に光を当て、冷静に歴史を捉えるようロシア国民に促した。

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