中国、高速鉄道の整備急ピッチ 総延長、新幹線の10倍超―赤字路線続出で債務懸念
2023年05月07日06時59分
中国が高速鉄道網の整備を加速させている。総延長は日本の新幹線の10倍を超える。今年は約2500キロ延び、南西部・雲南省の「秘境」にも到達する見込みだ。一方で採算が取れない赤字路線も続出し、債務膨張に懸念が高まっている。
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雲南省デチェン・チベット族自治州のシャングリラ。チベット仏教の寺院で有名な人口8万人ほどの町だ。標高3000メートルを超える高地で駅の建設工事が急ピッチで進む。年内に予定する高速鉄道が開通すれば、約140キロ離れた世界文化遺産の同省麗江まで今の2時間以上から約1時間半に短縮される見通しだ。30代の男性タクシー運転手は「観光客は必ず増える。開通が待ち遠しい」と声を弾ませた。
中国は2000年以降、内陸部の経済発展を後押しするため、高速鉄道の整備を一気に進めた。22年の総延長は約4万2000キロと、10年間で4倍以上に拡大。運営する国有企業の中国国家鉄路集団(国鉄)は、35年に7万キロに延ばす計画だ。
高速鉄道は観光客の増加や企業の進出を通じて地方の発展に寄与してきた。麗江では高速鉄道の乗り入れをきっかけに省都の昆明などとの往来が活発化。観光収入が増え、地域経済を支えている。
もっとも「大半の路線は赤字」(地方政府関係者)。中国メディアによると、国鉄の債務は6兆元(約117兆円)超と、国内総生産(GDP)比で5%程度に達する。人口が21年をピークに減少に転じる中、鉄道事業は厳しさを増しそうだ。
中国政府は21年、時速350キロ以上の高速鉄道について、路線開設などには乗客数が年2500万人を上回る必要があるとする新基準を公表した。先の地方政府関係者は「新路線は需要予測に基づき、厳しく選別する必要があるのかもしれない」と話した。