「物言う君主」、時に物議 母と異なるスタイル―チャールズ英国王
2023年05月07日06時53分
【ロンドン時事】チャールズ英国王は皇太子時代から、率直な言動で時に物議を醸してきた。即位しても「物言う」態度は変わっておらず、「君臨すれども統治せず」の原則をわきまえてきた母のエリザベス女王とは異なるスタイルの君主となりそうだ。
◇異例のロシア批判
「私たちはウクライナと共に立ち、いわれのない侵略から自由と主権を守る」。国王は3月、即位後初の外遊先となったドイツで開かれた晩さん会のあいさつで、ロシアによる侵攻を強く非難した。立憲君主制の英国で、君主は政治や外交に口出ししないとされるため、公的な場での異例の発言として注目された。
国王は環境保護や気候変動問題にも関心が高い。皇太子時代の2021年に英グラスゴーで開かれた国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)首脳級会合では、開会演説で「行動しないことによるコストは(危機を)阻止するためのそれより大きい」と述べ、居並ぶ首脳らに直接警告した。即位後初の外遊として、昨年11月にエジプトで開かれたCOP27への参加を希望し、トラス首相(当時)に反対され断念したほどだ。
◇問われる真価
国王は皇太子時代、「王位を継いでも同じやり方を続けるのはナンセンス。(皇太子と国王の)二つの状況は全く違う」と述べ、即位後は中立的立場を逸脱したと受け取られかねない発言を控える考えを示したことがある。だが、議論を呼ぶ言動をすぐに変えることは難しそうだ。
もっとも、エリザベス女王も「発信力」には定評があった。新型コロナウイルスの感染拡大で社会不安が広がっていた20年4月には、異例のテレビ演説で「私たちは共にこの病気と闘っている。団結し固い決意を持ち続ければ打ち勝てる」と国民を鼓舞した。
国民の心をつかむことにたけていた女王とは異なる言葉の力で、チャールズ国王が敬意と共感を集めることができるか。君主としての真価が、これから問われることになる。