邪魔者ウニ、育てたら特産に ブロッコリーでウニッコリー―愛媛・愛南
2023年05月06日13時32分
温暖な海に生息するガンガゼウニは食用に適さず、海藻類を食い荒らすため海の邪魔者扱いされている。愛媛県愛南町は、特産のブロッコリーやかんきつの廃棄部分を食べさせ、食用に育てた「ウニッコリー」を売り出した。漁場環境を改善させ、SDGs(持続可能な開発目標)に配慮した町の特産品の開発に携わった同町水産課の清水陽介さん(39)は「若い人に海の環境を考えてもらえれば」と期待する。
ガンガゼウニは毒性のある針があり、独特のえぐみや臭いがある。その上「生息数の推定を諦めるほど無尽蔵にいる」(清水さん)という邪魔者だ。
住民はこれまで、大量発生するガンガゼウニを駆除してきたが、漁場環境の改善を任された清水さんは「愛南にすむ生き物だから、殺すのではなく活用できないか」と愛媛大と協力。2018年から4年ほどかけて食用化を目指した。
「餌にお金をかけたくない」。ブロッコリーの芯を与えて臭いを取り除き、日本一の生産量を誇る河内晩柑「愛南ゴールド」で風味付けした。いずれも農協などから廃棄される物を無償で譲り受けた。籠にガンガゼウニと餌を入れ、1カ月ほど海に沈めると、身が詰まったウニに成長する。
ほのかにかんきつの香りがするウニは、一般のウニより低糖質。同町水産課の長田岩喜さん(60)は「私のような痛風持ちにも優しい」とアピールする。一方、味が淡泊な課題があるといい、最近は海藻のヒロメを食べさせ、ウニらしい濃厚な味に仕上げる実験を始めた。
ウニッコリーは地元の漁業者2人が育てている。昨年12月に本格出荷を始めたが、流通量は少なく、一般販売はしていない。観光施設「ゆらり内海」(同町)はウニ丼として提供しているが、深堀毅代表(58)は「すぐ売り切れ、幻の食材になっている。もっと量があれば」と期待する。
町は地域おこし協力隊の力を借り、ビジネスモデル構築を目指す。今シーズン(22年11月~今年5月)は昨シーズンの3~4倍に増やし、1パック70グラム入りのウニッコリーを300~400パックほど出荷する予定。清水さんは「愛南にはウニ以外にもマダイやカツオなどおいしい物がある。ぜひ町に来てほしい」と話す。