官民協力で混乱抑える 地銀の財務悪化には警戒感―米銀破綻処理
2023年05月03日07時18分
【ニューヨーク時事】米中堅銀行ファースト・リパブリック銀行の破綻処理では、米金融当局と大手行が協力し、破綻と預金・資産の引受先を同時発表することで、預金者や市場に安心感を与え、混乱を最小限に抑え込んだ。ただ、金利上昇に伴って保有債券に含み損を抱える地銀の財務悪化懸念は根強く、警戒感は残っている。
「米政府から協力要請があり、それに応えた」。ファースト銀を買収した大手行JPモルガン・チェースのダイモン最高経営責任者(CEO)は1日の声明で、官民が協力した破綻処理に胸を張った。
3月に破綻したシリコンバレー銀行(SVB)は、債券の含み損が表面化してからわずか2日で経営に行き詰まった。金融当局は資産などを買収する銀行の選定に手間取り、預金の全額保護を打ち出したのは2日後。対応が後手に回り、預金者らの動揺を招いた。
米メディアによると、金融当局は今回、先週から対応策を検討し、大手行にファースト銀の買収入札に参加するよう要請。最終的にJPモルガンが預金全額を引き取ることで預金者を保護する一方、買収した資産に損失が出た場合、その8割を米連邦預金保険公社(FDIC)が負担することで折り合った。
1日の米株式市場では「預金保護や混乱回避に尽力していることが伝わり、安心感が広がった」(邦銀関係者)と好意的に受け止められ、大きな混乱は起きなかった。
ただ、一部の地銀株は大幅に下落。SVBと同様、ベンチャー企業の預金流出に見舞われたパックウエスト・バンコープは約1割安、預金保護の対象外の預金が多いウエスタン・アライアンス・バンコーポレーションも続落した。「投資家は地銀の動向を見守っている」(同)との声もあり、信用不安の火種はくすぶっている。