改憲で賛否両派が火花 先住民機関、結束か分断か―豪
2023年05月02日20時36分
【シドニー時事】オーストラリアで、先住民の地位確立に向けた憲法改正を巡り、賛否両派が支持獲得の運動に力を入れだした。最大の争点は先住民の代表機関創設案で、アルバニージー政権など推進派は、先住民迫害の歴史を踏まえ「和解を進め国民を結束させる」と強調。最大野党・自由党など反対派は「一部の人々を特別扱いし、国民を分断する」と主張し、火花を散らしている。
改憲案は、アボリジニとトレス海峡諸島民を「最初の豪州人」と認め、議会や政府に意見を述べることができる代表機関を設置するという内容。アルバニージー首相(労働党党首)は10~12月の国民投票実施を目指している。調査会社ユーガブの世論調査によると、賛成が51%、反対が34%、未定が15%。賛成派は上積み、反対派は巻き返しを狙い、それぞれ広告動画を流すなどして支持取り付けに懸命だ。
賛成派は野党支持層の取り込みを図る。その一環として、ウルトラマラソン走者のファーマー元自由党下院議員が全国を走って支持を訴えるキャンペーンを4月17日から始めた。10月に先住民の聖地ウルル(エアーズロック)で締めくくる予定だ。出発式でファーマー氏は「豪州人は成熟しており、過ちから学び、国を一つにできる」と力説。アルバニージー首相も駆け付け、「これは政治を超越した運動であり、正義と和解のためだ」と語った。
一方、自由党執行部は、改憲を支持する元閣僚らの造反を受けて引き締めに躍起だ。有力議員で構成する「影の内閣」の一部を入れ替え、強硬な反対派で固めた。5月1日の議会公聴会には反対派の急先鋒(せんぽう)アボット元首相が登場し「祖先の違いによって国を分断するのは間違いだ」と批判。反対派の広告動画は「われわれを分断する機関にノーの一票を」と呼び掛けている。