少子化対策、問われる実効性 外国人受け入れも焦点に―人口減・高齢化で課題山積
2023年04月26日15時38分
26日に公表された将来推計人口によると、外国人の入国増で人口減のスピードが緩やかになるものの、少子高齢化の大きな流れは変わらなかった。社会保障制度の見直しや労働力確保に向けた働き方改革など課題が山積する中、岸田政権が最優先課題に掲げる少子化対策がどこまで成果を上げるかが、今後の人口動向を占う上でまずは大きな試金石となる。
50年後、人口8700万人 10人に1人が外国人―出生率、前回推計から低下・厚労省
◇専門家「雇用安定を」
今回の推計では、最も重要な指標である「合計特殊出生率」が2070年に1.36になると仮定。それでも、人口規模の維持に必要な出生率2.07や、政府が目標に掲げる「希望出生率」1.8の達成に遠く及ばない。経済的理由などで結婚したくてもできない若者も少なくなく、生涯未婚率も高まっていることが背景にある。
岸田文雄首相は「これから6年から7年が少子化傾向を反転できるかのラストチャンス」と強調。「異次元の少子化対策」を掲げ、3月末に子ども・子育て支援策のたたき台を策定した。6月に取りまとめる経済財政運営の基本指針「骨太の方針」で、関連予算「倍増」の大枠を明らかにする予定で、財源確保が目下の大きな注目点だ。
日本総研の藤波匠上席主任研究員は「児童手当の拡充といった取り組みも大切だが、雇用の安定や賃金アップを通じて若者が将来に希望を持てる社会にすることが重要」と強調。経済対策も同時に進めないと、出生率1.36の達成すら容易でないと分析する。
厚生労働省幹部は「推計は、条件が違ってくれば見通しも変わる。少子化対策の効果で明るい兆しが出れば、人口減少のペースを遅らせることは可能だ」と強調。別の幹部は経済の観点だけでなく、子ども連れや妊婦が優先入場できるレーンの設置などが「当たり前の社会になるかどうかが大きい」と話す。
◇単なる労働力ではなく
総人口に占める外国人の割合が20年の2.2%から70年の10.8%へ増える将来像が打ち出されたことも特徴だ。今回の推計で、16~19年の平均値を踏まえた入国超過数は、年間約16万人と仮定。前回推計の約7万人から大幅に拡大させた。
出生率の大幅改善が見通せない中、働き手となる外国人の受け入れは一つの選択肢となり得る。しかし、外国人労働者の受け入れが「事実上の移民政策」につながる懸念も根強く、厚労省幹部も「国民的議論が必要」と話す。
一方で世界的に人材獲得競争が激化し、外国人が想定通り日本に来るかは不透明だ。藤波氏は「日本が魅力的であり続けるには賃金など雇用環境の改善が必要だ。単なる労働力と捉えるのではなく、外国人に定住してもらうための施策も必要になる」と指摘する。