首相解散判断に不安材料も 自民5補選勝ち越し―立民動揺、維新勢い
2023年04月25日07時09分
23日投開票の衆参5補欠選挙は、自民党が4勝1敗で勝ち越し、岸田文雄首相(党総裁)が政権運営に一定の評価を得る結果となった。ただ、日本維新の会に和歌山県で初の国政議席確保を許すなど、与党側の不安要素も浮き彫りになった。衆院議員任期の折り返し点が10月に迫る中、衆院解散を巡る首相の判断に注目が集まる。
首相は24日、補選を受けて「重要政策課題をしっかりとやり抜けという叱咤(しった)激励と受け止めている。政治を力強く進めたい」と首相官邸で記者団に表明。解散については「今、考えていない」と語った。
自民党内では投開票前、自民党の議席だった衆院千葉5区、山口2区、同4区を維持できれば「及第点」(関係者)との見方が強かった。結果はこれらに加え、参院大分選挙区で野党側から議席を奪取した。
ただ、党内からは「勝負に勝って内容で負けた」(幹部)との声が上がる。首相が応援に2回入った衆院和歌山1区で維新に競り負け、野党が乱立した千葉5区や保守王国の山口2区で苦戦を強いられたためだ。森山裕選対委員長は記者団に「衆院選に向け教訓を残した」と危機感をあらわにし、菅義偉前首相は「大接戦が数多くあった」と指摘した。
党内には投開票前に「4勝1敗以上なら今国会中の解散もあり得る」(関係者)との声もあった。しかし、ベテラン議員は「調子に乗れるような結果ではない」と分析。岸田派若手は「勢いで解散に踏み切れる勝ち方ではない」と語った。
公明党は「勝ち越しは公明党の力だ」(党関係者)とみて、衆院小選挙区の「10増10減」に絡んだ候補者調整などで自民党に譲歩を迫る構え。山口那津男代表は記者会見で「大混戦を僅差で制したのは選挙協力のたまものだ」と強調した。
3選挙区で全敗した立憲民主党には動揺が広がる。大串博志選対委員長は記者団に、千葉5区の接戦などを念頭に「政権批判票の受け皿にはなり得た」と語ったが、党内には党執行部の責任を問う声もくすぶる。
維新は奈良県知事選の勝利に続き、大阪府と兵庫県以外で初となる衆院小選挙区議席を和歌山1区で確保し、全国政党化の足場を築いたと勢いづく。馬場伸幸代表は会見で、次期衆院選で野党第1党を目指すと強調し、立民との選挙協力は「絶対にあり得ない」と明言した。
議席を得られなかった共産党の小池晃書記局長は会見で「選挙結果は政権批判の強さを示した。(野党)共闘再構築に力を尽くしたい」と述べた。