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渡辺長武さん死去、81歳 レスリング五輪金、189連勝

2023年04月15日19時59分

1964年東京五輪レスリングフリースタイル・フェザー級でホハシビリ(右、旧ソ連)を破って優勝した渡辺長武さん=同年10月14日、東京・駒沢オリンピック公園総合運動場体育館

1964年東京五輪レスリングフリースタイル・フェザー級でホハシビリ(右、旧ソ連)を破って優勝した渡辺長武さん=同年10月14日、東京・駒沢オリンピック公園総合運動場体育館

  • 1964年東京五輪に向けた強化合宿で練習するレスリングの渡辺長武さん=1963年12月、埼玉・朝霞スポーツセンター

 レスリングの1964年東京五輪フリースタイル・フェザー級金メダリスト、渡辺長武(わたなべ・おさむ)さんが昨年10月に81歳で亡くなった。闘争心と計算し尽くされた技術を併せ持つ、比類なきレスラーだった。
 少年時代は家業の石材商で石運びなどを手伝う毎日。自然と足腰が鍛えられた。レスリングを始めた北海道・士別高時代、56年メルボルン五輪で同じ北海道出身の池田三男がフリースタイル・ウエルター級で金メダルを獲得。「レスリングでも英雄になれる」と感銘を受け、競技にのめり込んだ。中大でも猛練習を続けて世界トップ選手に。23歳で臨んだ東京五輪では相手に1点も許さず優勝した。その闘争心は「アニマル」、正確な技術は「スイス時計」と評された。
 東京五輪後はきっぱりと現役を退き、大手広告代理店に就職してビジネスマンとして激務をこなした。ただ、独立して起業したイベント会社が失敗。挫折を味わい、「またレスリングをしたい」と87年に46歳で現役に復帰した。翌年のソウル五輪を目指し、代表選考につながる全国社会人大会に出場。しかし、若手に敗れて公式戦での連勝記録は189で止まり、2度目の五輪の舞台には立てなかった。
 座右の銘は「負けは死と思え」。どんな分野でも、年齢を重ねても全力を尽くすのが信条。レスリングの普及活動にも携わり、2004年に紫綬褒章を受章した。70歳を過ぎても腹筋500回が日課。五輪金メダルを量産する女子に比べ、男子の存在感が薄い近年のレスリング界を憂い「コーチでも何でも、頼まれれば何でもやる。だから体を鍛えて準備しているんだ」と語っていた。レスリングにささげた人生だった。

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