「分断」G20、変化の兆し 先進国、利害優先で新陣営―全会一致に限界・財務相会議閉幕
2023年04月14日19時40分
米ワシントンで開かれていた20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議は、今回も全会一致が原則の共同声明を採択できずに閉幕した。日米欧の先進7カ国(G7)は、軍事侵攻を続けるロシアとの亀裂が埋まらず、中国やインドとも利害がぶつかり合う。欧米の利上げや金融不安で世界経済が失速しかねない状況にもかかわらず、参加国の分断はもはや覆い隠せない。協調を取り繕うよりも、政策課題ごとに利害の一致するメンバーが柔軟に陣営を組んで解決を目指す試みが動き始めた。
◇20でも7でもない
「G20でもG7でもない、全く新しい枠組みだ」(日本の財務省幹部)。機能不全を改めて露呈したG20会議の終了後、事実上のデフォルト(債務不履行)に陥ったスリランカに対する債権国会合の発足を祝うイベントが開かれた。G7議長国の日本が主導してフランス、G20議長国インドと共に設立した。スリランカ向け債権額が日本に次いで3番目に多いインドを巻き込んで「2位、3位連合」を組んだことで、債務減免に難色を示す最大債権国の中国にプレッシャーをかけられる。
途上国債務を巡っては、欧米の急速な利上げが多額の債務を抱える低・中所得国の負担増を招きかねない。仮にデフォルトが連鎖すれば、世界経済に大きなダメージを与える。債務の減免や返済期限の延長が実現すれば、危機を回避できる上、「グローバルサウス」と呼ばれる新興・途上国グループの盟主を自任するインドにとっては、自陣営での存在感がさらに強まるメリットもある。
◇中ロに対抗
脱炭素化に不可欠な重要物資・製品の調達先が中国など一部の国に偏っている問題に関し、G7会議はG20に先立って討議。低・中所得国をG7による財政・金融支援で囲い込み、調達先を多様化することで合意した。
この問題は、中国がメンバーに入るG20では議論されなかったという。国際金融筋は「経済安全保障の観点だけでなく、感染症のパンデミック(世界的大流行)などの際の混乱にも対応できる」と指摘する。ロシアの軍事侵攻後、特に浮き彫りになった中ロによる資源の囲い込みに対抗するため、先進国主導で陣営づくりを進めようとの思惑が透けて見える。
◇柔軟に連携
G20は、1999年に財務相・中銀総裁会議が発足。2008年のリーマン・ショック後には首脳会議が創設され、協調の枠組みを広げてきた。しかし、近年はトランプ前米大統領の自国第一主義、米中対立、ロシアのウクライナ侵攻など遠心力が働いている。
鈴木俊一財務相は13日の米ワシントンでの記者会見で、G20について「存在意義はある」と機能不全を否定してみせたものの、今回の会議で議長国インドは初めから共同声明を採択するつもりがなかった。全会一致の合意形成を目指す国際協調の限界を物語る。
一方、ロシアの侵攻などで世界情勢が複雑化したことに伴い、先進国が連携を模索する政策課題は「どんどん密度が高くなっている」(日本の財務相同行筋)という。今後、G20にとらわれない枠組みづくりが加速しそうだ。(ワシントン時事)