維新、全国政党化へ攻勢 与野党に危機感拡大―衆参補選・統一選後半戦が焦点
2023年04月10日19時19分
日本維新の会は統一地方選前半戦の躍進をバネに全国政党化へ攻勢を強める構えだ。自民党は保守層の奪い合いになると警戒。公明党は維新が宣言した共存関係の「リセット」に身構え、立憲民主党は野党第1党の座が危ういと危機感を募らせる。流れを変えるため、各党は23日投開票の衆参5補欠選挙と統一選後半戦に全力を挙げる。
◇「自民と対峙」
「大阪のみの政党ではなく、全国政党だと少しずつ浸透してきた。足腰を強くすれば、自民党と対峙(たいじ)する政党に成長する」。地域政党「大阪維新の会」の吉村洋文代表は10日の記者会見でこう強調した。自身は9日投開票の大阪府知事選で再選を果たした。
維新が描くのは、次の衆院選で野党第1党に躍り出て、遅くともそこから2回の衆院選で政権交代を果たすとの青写真だ。統一選前半戦の結果を「野党第1党へ大きな一歩」(音喜多駿政調会長)と受け止めている。
維新は大阪府知事・市長の「ダブル選」を制した上、大阪府議会に加えて初めて大阪市議会で過半数を確保。さらに「府県境の壁」を越えて奈良県知事選で勝ち、関東を含む今回の41道府県議会で選挙前の総議席を倍増させた。
ただ、不安材料がないわけではない。今回の大阪市長選を機に、2010年の大阪維新結党以来、中軸を占めてきた松井一郎前市長が政界を引退。「重し役」の不在は、国政政党「日本維新の会」執行部と大阪府議・市議団の不協和音を増幅させる可能性がある。
◇「地殻変動」
維新伸長を受け、自民、公明両党は10日の政府・与党連絡会議で、衆参補選と統一選後半戦で協力を強めることを確認。自民党総裁の岸田文雄首相は「一致団結して勝ち抜きたい」と呼び掛け、公明党の山口那津男代表は「勝利を目指して協力して臨みたい」と応じた。
自民党が危機感を強めるのは「全国進出の足掛かりを許した」(関係者)とみるためだ。自民と維新は支持層が重なるため、争奪戦になれば打撃は大きい。自民党幹部は「地殻変動が起きる。野党第1党を取れそうなら、維新は政権に対決姿勢を強める」と語った。
ただ、自民党は41道府県議選全体で勝敗ラインと目された5割を超える51%の議席を確保。世界平和統一家庭連合(旧統一教会)問題も「影響は消えた」(幹部)と分析する。維新の準備が整う前に衆院選に臨む方が得策だとして「早期の衆院解散はあり得る」(幹部)との声も出ている。
◇「交渉に余地」
自民党以上に焦燥感を募らせるのが公明党だ。維新はこれまで大阪市議会で半数を割っていたため、市政運営で公明党と協力。衆院選ではその見返りに大阪などの6選挙区で公明党への対抗馬擁立を見合わせてきた。しかし、今回の市議選で過半数を獲得し、「共存」の前提条件が崩れた。
維新の馬場伸幸代表は9日の会見で「公明との関係は一度リセットする」と表明。ある議員は「六つとも対抗馬を立てるべきだ」と息巻いた。
維新執行部が協力復活を排除していないことから、公明党はまずは維新の出方を見守る構え。山口氏は10日、記者団に「責任ある対応を期待したい。注意深く見ていきたい」と表明。公明党関係者は「本音で話せば交渉の余地はある」と語った。
一方、立民内では維新との国会「共闘」見直し論が強まる可能性がある。ただ、立民も41道府県議選全体で自民党に次ぐ第2党となったことから、執行部は「やっと反転攻勢の芽が出てきた」(大串博志選対委員長)としており、当面は衆参補選と統一選後半戦に集中する方針だ。