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岸田首相、衆院解散へ試金石 防衛・原発で与野党激突―春の衆参補選に号砲

2023年04月06日19時47分

首相官邸に入る岸田文雄首相=6日、東京・永田町

首相官邸に入る岸田文雄首相=6日、東京・永田町

  • 記者団の質問に答える立憲民主党の泉健太代表=6日、大分市

 参院大分選挙区補欠選挙が告示され、衆参5補選の号砲が鳴った。統一地方選と合わせて各党の勢いを占う指標となる。政府が決めた防衛・原子力政策の転換などを争点に与野党が激突。岸田文雄首相が一定の評価を得て、衆院解散のフリーハンドを得られるかの試金石となりそうだ。
 ◇「首相はやる気」
 「口汚く人を罵倒する政治家が増えた。人をサルと呼ぶ人まで出てきた」。自民党の世耕弘成参院幹事長は6日、大分市で街頭演説し、対立候補を担ぐ立憲民主党を批判した。
 11日には衆院4補選も告示され、23日に投開票される。これほど多くの補選が同日選となるのは7補選を数えた2002年秋以来。政権への中間審判の色彩が濃くなった。
 首相は昨年12月に防衛力の抜本強化と原発の最大限活用の方針を決定。先の日韓首脳会談やウクライナ訪問など外交でも一定の成果を挙げ、内閣支持率は回復傾向にある。自民幹部は「首相はやる気だ。全選挙区を回る考えだ」と明かした。

 ◇「3勝の目標は甘い」
 自民には不安材料もある。
 公明党が5補選で自民推薦を決めたのは、大分補選告示のわずか3日前。衆院選挙区「10増10減」に伴う候補調整を有利に運ぶため、揺さぶりをかけたとみられている。自民内には「がまんできない」(関係者)と不満が募り、選挙協力が円滑に進むかは見通せない。
 大分、山口2区、4区は野党系候補の一本化も進み、事実上、与野党一騎打ちの構図となったことも自民は懸念する。世界平和統一家庭連合(旧統一教会)問題を巡る逆風も完全にやんだとは言えない。
 千葉5区は自民議員(離党)が「政治とカネ」問題で辞職したため、本来なら逆風下の選挙だが、野党乱立により自民有利との見方が強かった。山口2区、4区は保守地盤が厚い。自民は残る2選挙区に「豊富な資源を集中投下できる」(関係者)として、当初「全勝して当たり前」(関係者)との楽観論もあった。ただ、その空気は雲散しつつあり、党幹部は「優勢なのは安倍晋三元首相の弔い合戦の山口4区ぐらい」と引き締めた。
 首相は5補選と統一選で「勝利」し、衆院解散のタイミングを探りたい考えとみられる。自民内では今国会中の解散もあり得るとの観測も根強い。一方で「敗北」すれば政権基盤は揺らぎかねない。
 首相は補選の勝敗ラインを「3勝2敗」と想定しているとの見方が党内で出ている。だが、党関係者は「3勝では甘い。一つでも取りこぼせば首相への風当たりが強まる」とみている。
 ◇野党共闘、機運乏しく
 「岸田政権は安全保障ばかり予算を膨らませ、国民生活を後回しにしている」。立民の泉健太代表は大分市の演説で政権を批判した。記者団に「野党の力を合わせる」と意気込んだ。
 ただ、野党共闘の機運は乏しい。3選挙区の野党系一本化は、党本部レベルでの調整の結果ではなく、地方組織が弱い党が擁立を断念した側面が強い。都市部の千葉5区は「一本化すれば勝機はある」(立民中堅)と期待されたが、野党が競合する。
 支持率が低迷する立民は次期衆院選への展望も開けない。党内からは「全敗したら代表交代論が強まる」(関係者)との声も出る。
 日本維新の会は全国政党化に向け、和歌山での初の議席確保に全力を挙げる。大阪知事・市長の「ダブル選」など統一選前半戦が9日に終われば、全戦力を和歌山1区に集中させる構えだ。

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