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インボイス、制度周知に課題 中小・零細、不安根強く―10月導入まで半年

2023年04月05日16時38分

【図解】インボイスのイメージ

【図解】インボイスのイメージ

  • 【図解】インボイス制度の流れ

 消費税の正確な納税額把握を目的としたインボイス(適格請求書)制度の開始まで、半年を切った。10月1日からは原則として、インボイスがないと消費税を納める際に控除が受けられなくなり、影響は甚大だ。政府は事務負担が大きい中小・零細事業者らへの激変緩和措置を講じたが、不安の声は根強く、制度の周知が大きな課題となっている。

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 ◇免税事業者から悲鳴
 インボイスは、売り手が買い手に交付する請求書で、品目ごとに10%、8%の消費税適用税率や金額が明記されている。10月以降は、事業者が消費税を納める際、商品などを仕入れた時に支払った分を差し引くことができる「仕入れ税額控除」を受けるために必要となる。
 ただ、インボイスを発行するには税務署への登録が必要。登録すれば「課税事業者」として納税義務が生じ、煩雑なインボイス発行の事務処理負担も増す。このため、現在は消費税の納税が免除されている売り上げ1000万円以下の「免税事業者」を中心に懸念が広がる。
 免税事業者には、個人タクシーの運転手や声優ら、個人事業主やフリーランスも多い。登録は任意だが、取引先からインボイス発行を求められるケースも増えるとみられ、「最悪の場合、出版社などから免税事業者であることを理由に取引が中止されるリスクもある」(日本漫画家協会)という。

 政府も手をこまねいているわけではなく、免税事業者から課税事業者となった場合、制度開始から3年間は受け取った消費税額の2割を納めればよいとする激変緩和措置を導入。1万円未満の少額取引であれば、6年間はインボイスなしで仕入れ税額控除を認める負担軽減策も講じている。
 ◇問い合わせで混乱も
 国税庁によると、2月末時点のインボイス発行登録件数は約240万件。このうち課税事業者は約210万件で、登録が見込まれる約300万件の7割程度に上る。一方、免税事業者の登録は約30万件と、2019年に推計した約160万件の見込みに比べると2割に満たない。
 中小企業団体の担当者は「当事者でありながら、制度について理解できていない事業者もいるのではないか」と指摘。現状のままでは制度開始前後に「税務署への問い合わせが殺到して大混乱に陥る可能性もある」として、マイナンバーカードなどと同様、テレビCMも継続活用して幅広く周知するべきだと訴える。
 これに対し、国税庁の担当者は「インボイスはマイナンバーカードと異なり、全国民が対象となるわけではない」と話す。同庁は全国の税務署を通じて説明会を開催するほか、相談体制も強化しているが、残る半年でどこまで浸透させられるかは不透明だ。

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