縦割り解消なるか 「予算倍増」問われる説明―こども家庭庁、多難の船出
2023年04月03日17時45分
岸田政権が最重要課題に位置付ける少子化対策の司令塔「こども家庭庁」が3日、本格的にスタートした。縦割り解消を目指すが、長年の懸案だった「幼保一元化」は今回も実現せず。「予算倍増」を掲げながらその根拠もあいまいだ。2022年の年間出生数が80万人を割り込むなど少子化対策は待ったなしで、具体策の提示が急がれる。
◇「伝家の宝刀」
同庁は430人体制で発足。ただ、東京・霞が関で政策立案などに当たる職員は350人で、役所の規模は決して大きくない。行政の縦割りを打破し、他省庁を巻き込んで強い司令塔機能を発揮できるかが成功のカギを握る。
担当相には、方針に従わない省庁に対応の是正を求める「勧告権」という強い権限が与えられた。同庁幹部は「勧告権は重要な武器だが、振りかざすのではなく、調整を進める中で必要と判断したときに使う『伝家の宝刀』だ」と語る。
ただ、同庁に移管されるのは厚生労働省と内閣府の担当部局のみ。文部科学省所管の幼稚園や教育行政は移管されず、幼稚園と保育所の所管を統一する幼保一元化は見送られた。同庁内には「組織が違う以上、縦割りは完全にはなくならないのでは」との声も漏れる。
◇集中支援
「子どもたちにとって何が良いことなのかを常に考え、皆さんが健やかで幸せに成長できる社会を実現する」。国会日程の合間を縫って3日の同庁発足式に出席した岸田文雄首相はこう宣言。式では、子どもらが同庁に掲げる看板の文字を分担して筆で書き、「こどもまんなか社会」を目指す姿勢も演出した。
1990年、1人の女性が生涯に産む子どもの数の推計を示す前年の合計特殊出生率が当時の過去最低を記録した「1.57ショック」を機に、国は少子化対策を検討。しかし、「子どもがいない人や子育てが終わった人の理解が得られにくく、安定的な財源が確保できなかった」(同庁幹部)。
潮目が変わったのは、2010年代の「社会保障と税の一体改革」から。消費税の財源が子ども・子育てにも配分されるようになり、保育所の受け皿拡大や幼児教育・保育の無償化が進んだ。
政府が先月末公表した「異次元の少子化対策」のたたき台では、児童手当の所得制限撤廃や子育て世帯への住宅支援の強化、仕事と子育ての両立支援など幅広い分野でメニューをそろえた。首相周辺は「人口減少の現状を考えれば、子育て家庭への集中的な支援を真剣に進めなければいけない」と訴える。
◇倍増以上?
問題は財源だ。首相は「将来的に子ども関連の予算倍増を目指したい」と繰り返すものの、倍増の基となる額も、たたき台の実現に必要な額も示していない。政府は6月にまとめる経済財政運営の基本指針「骨太の方針」で、子ども・子育て予算の大枠を示す方針で、安定財源をどう確保するかが問われる。
同庁幹部は「個別の制度設計によって額はかなり変わる」と説明。有識者からは「社会保険料から出すのが有力」「消費税と社会保険料との組み合わせが現実的」といった声も出る。「たたき台を全て実現するには倍増どころじゃ済まないよ」。子ども施策に詳しい自民党中堅はこう嘆いた。