中国、AI開発を加速 データ収集や半導体調達に課題も
2023年04月02日07時07分
【北京時事】中国が対話型人工知能(AI)の開発を急いでいる。米新興企業が発表した「チャットGPT」が世界的注目を集める中、中国ではIT大手の百度(バイドゥ)などが研究を加速。ただ、AIの性能向上に必要な学習データは質量とも英語が中国語を圧倒しており、開発の足かせとなっている。ハード面でも不可欠な先端半導体の調達が米中対立の影響で難しくなりつつあり、先行き不透明感も漂う。
「イベントのポスターを作って」「詩を書いて」。3月半ば、百度が開いた発表会では、同社の対話型AI「文心一言(アーニー・ボット)」が課題に取り組む動画が公開された。李彦宏会長兼最高経営責任者(CEO)は「人間に近い能力がある」と性能をアピール。高度なリポート作成などにも対応した「発展版」も公開した。アリババ集団や華為技術(ファーウェイ)も、同様に開発を進めている。
3月下旬に海南省で開催された国際経済会議「ボアオ・アジアフォーラム」の年次総会でも、AIの活用について議論が交わされた。百度幹部は対話型AIの出現により「生産や生活まで全てが変化する」と展望した。
もっとも、開発の先行きは定かでない。百度の発表会では現場での実演が無く、失望から同社の株価が急落。李氏も「まだ完全ではない」と認めた。
中国ではインターネットの利用が厳しく規制されている。百度の場合、AIに学習させるのは自力で収集した中国語の「検閲済みデータ」が中心とみられ、世界中のデータを自由に扱える米企業に比べ「最初からハンディキャップを負っている」(IT関係者)。政府の規制に適合するためシステムを「中国化」する作業も必要となる。AIが政府批判などを行った場合、企業に対し営業停止などの制裁が科される可能性があるからだ。
米国主導で進む対中輸出規制強化の動きも懸念材料だ。先端半導体の対中輸出を禁じた米国は、禁輸対象をさらに広げる構えで、3月末には日本政府も半導体製造装置の実質的な対中輸出規制の導入方針を打ち出した。
最先端のAI開発が難航する恐れは高まるばかりで、習近平指導部が掲げる「科学技術強国」の実現に向け、課題山積の状態だ。