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「町の桜の色を」工房開設 草木染に取り組む男性―福島・富岡

2023年04月01日13時32分

夜の森地区の桜をモチーフに制作したハンカチを広げる小野耕一さん=3月24日、福島県富岡町

夜の森地区の桜をモチーフに制作したハンカチを広げる小野耕一さん=3月24日、福島県富岡町

 福島県富岡町の小野耕一さん(75)は、避難指示解除に合わせ、町のシンボルとなっている桜並木の見える場所に藍染めや草木染の工房を開いた。「いつか町の桜できれいなピンク色を出したい」と意気込む。

復興に向け先端研究拠点 福島・浪江町で開所

 幼い頃から桜並木のある同町夜の森地区で育った。福島第1原発事故後は同県郡山市に避難。仮設住宅暮らしで手持ちぶさたとなる中、体験教室に参加して染色のとりこになった。「何年やっても毎回違う色や模様が出る。どれ一つ同じ作品はなく、飽きない」と語る。
 染織技術を習得した後、2012年7月、郡山市内に町民有志で「おだがいさま工房」を開所。「お互いさま」の方言で、仮設住宅で支え合って生きる大切さを実感したことから命名した。
 町への帰還を願い、県内の三春町や楢葉町に工房を移しながら制作を続けた。取り組みは徐々に知られ、新型コロナウイルスが流行する前には、女性用アメニティーグッズを包むハンカチを郡山市のホテルに納品した。
 「ほっとした」。昨年4月には、準備宿泊で11年ぶりに自宅で過ごした。2階からは、2.2キロに及ぶソメイヨシノの並木が見渡せる。以前から自宅近くで工房を作ることも決めており、「(周りから)こんなところで何するんだと言われるけど、好きな時に工房で作業ができて自由だ」と語る。
 準備宿泊を始めてからは、楢葉町にある工房から染料を煮出すための鍋などを運び出し、着々と準備を進めてきた。新たに建てた工房では、ハンカチやショールを制作するほか、体験教室も行う予定だ。
 現在挑戦するのは桜の花と枝を使った草木染。きれいなピンク色を出すには高い技術が必要で、試行錯誤の日々が続く。「数年でできるもんじゃない。まだまだだが、町の桜の色を出せるようにしたい」と話した。

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