訪米前に沈静化図る 韓国「外交司令塔」突然の交代―ブラックピンクが原因?
2023年03月31日07時06分
【ソウル時事】韓国大統領府の国家安保室長に趙太庸前駐米大使が30日、就任した。尹錫悦大統領が4月下旬に国賓として米国を訪問する重要な外交案件を控えた時期の突然の交代で、韓国メディアは「衝撃」と伝えた。大統領府は、懸念の沈静化に努めている。
室長は、大統領府で外交・安全保障政策を総括する「司令塔」だ。昨年5月の尹政権発足から1年に満たない中での交代となった。前任の金聖翰氏は29日、報道機関に送った声明で辞任を表明。約1時間後には大統領府が後任を発表したことから韓国メディアは「事実上の更迭」と報じ、訪米への影響を論じている。
報道によれば、ジル・バイデン米大統領夫人側から訪米時の行事として韓国の女性音楽グループ「BLACKPINK(ブラックピンク)」と米歌手レディー・ガガさんの共演などが提案された。しかし、尹氏にすぐに報告されず、準備も積極的に進められなかった。国家安保室とは別のルートでこの提案を知った尹氏はこれを問題視。室長交代のきっかけになったという。
大統領府関係者は30日、室長交代による「訪米への影響はあり得ない」と説明。大学教授出身の金聖翰氏の下で米韓同盟強化や日米韓の協力を重視する外交の方向性が示されたと指摘。それを具体化する次の段階では外交官出身の趙太庸氏が適していると強調した。
室長交代をきっかけに外務省高官の異動も予想される。外交関係者の間では、空席となった駐米大使には趙賢東外務第1次官が有力視される。
尹氏は5月に広島で開かれる先進7カ国首脳会議(G7サミット)にも参加する予定。大統領府には対日関係に詳しい金泰孝国家安保室第1次長がいる。韓国の専門家は「尹氏の対日関係改善の意志は強く、趙太庸氏もよく分かっている」と述べており、室長交代の対日関係への影響は大きくはないと分析されている。