浮かぶ利益優先 他社情報基に「高値入札」―自由競争に背く・電力各社
2023年03月31日09時14分
過去最高の課徴金納付を命じられ、独禁法違反行為に幹部も関わったと認定された大手電力各社。公正取引委員会が2年近くかけた調査結果からは、処分を免れた関西電力を含め、自社の利益確保を優先し、経営体力をそぎかねない自由競争に背を向ける姿勢が浮かび上がる。
電力大手に課徴金計1010億円 中部・中国・九州でカルテル―幹部関与、過去最高額・公取委
関電が大手3社の営業エリアに進出したのは2017年末。高浜原発3、4号機(福井県)が原子力規制委員会の審査を通り、再稼働したことで運転コストが低下し、電気料金の値下げが実現したことが大きな要因だった。しかし、関電を含め、価格競争が利幅を縮小させる状況は避けたいと電力各社が考えるようになるまで長い時間はかからなかった。
公取委によると、役員級や部長級、課長級で頻繁に会合を実施。結ばれたカルテルの合意に基づき、関電は官公庁での入札価格を引き上げ、その情報を事前に中国電へ伝えるなどした。同社は関電の情報を基に、競争が行われた場合よりも高値で入札したという。
中部電力は合意成立後、関電エリアでの売り上げ目標を大幅に縮小させたほか、顧客獲得が難しいほどの高価格をあえて提示するなどして電気料金の値下げを阻んだとされる。一方、関電も中部電エリアで社員による直接営業を控えるなど競争は大きく後退した。
九州電力と関電の合意は当時の役員同士による電話で行われた。その後、九電は中国電と同様、関電の情報を基に自社グループの入札を行うなどした。
調査では、カルテル以外にも大手各社が自由競争を阻害しかねない行為をしていたことが判明。他社エリアで営業する際は、「仁義切り」と称して事前に伝える行為が慣習化していたほか、安売り競争のけん制なども行われていた。公取委はこれらの情報を電力・ガス取引監視等委員会に提供した。