中国、途上国に32兆円融資 「一帯一路」で、米は影響拡大懸念
2023年03月30日20時34分
【ワシントン時事】世界銀行は29日までに、中国が過剰債務を抱える途上国・新興国22カ国に対し、過去20年間に計2400億ドル(約32兆円)相当の緊急融資を行ったとする調査報告書を発表した。経済圏構想「一帯一路」の参加国が中心で、中国が巨額支援を通じ相手国への支配を強めてきた実態が浮き彫りとなった。
デフォルト拡大に「現実味」 新興国債務危機を懸念―元IMF副専務理事
一帯一路では、中国が支援対象国のインフラを軍事などに利用する目的で借金漬けにして影響力を高める「債務のわな」が問題視されている。世銀が米ハーバード大と共に調査した結果、中国は2000年以降、デフォルト(債務不履行)危機に直面したスリランカやパキスタン、エジプトなどに計128件の緊急融資を行った。
報告書によれば、中国の海外融資全体に占める過剰債務国の割合は10年に5%弱だったが、22年には60%まで上昇した。中国は一帯一路の参加国による債務減免要求に応じない一方、短期融資で足元の資金繰りを支援しており、「グローバルな貸し手として世銀や国際通貨基金(IMF)を猛追している」(報告書)状況だ。
日米欧の先進7カ国(G7)は中国の影響力拡大を強く懸念している。イエレン米財務長官は29日の議会証言で「中国が世界の国々に『債務のわな』を仕掛けていることを非常に心配している」と強調。米国が主導する世銀など国際金融機関の改革を早期に実現しなければ、「中国の参入機会が一段と増えることになる」と警鐘を鳴らした。