新START存続に暗雲 核戦力情報の提供停止―米
2023年03月30日07時09分
【ワシントン時事】米政府は28日、ロシアとの新戦略兵器削減条約(新START)で義務付けられる核戦力に関する情報提供を停止すると発表した。ロシア側が条約を履行していないことへの対抗措置。新STARTは米ロ間に残された唯一の核軍縮の枠組みだが、その存続が危ぶまれている。
米国務省のパテル副報道官は28日の記者会見で、ロシアのプーチン大統領が2月に発表した条約の履行停止について「ロシアの情報共有の不履行は条約違反となる」と指摘。その上で「条約順守を促すため」として、米国も情報提供を停止すると表明した。
新STARTでは、大陸間弾道ミサイル(ICBM)など戦略核弾頭の配備数を制限し、検証に必要な査察活動などの実施を義務付けている。また、米ロが年2回、配備済みの核弾頭やミサイルを含む核運搬手段の数や配置、特徴に関する情報を共有することも定めている。
だが、ウクライナ侵攻を続けるプーチン氏は2月、新STARTの履行停止を発表。ロシア側はこれに先立ち査察活動などを拒否し、米国は非難のトーンを強めていた。
米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(電子版)によると、ジェンキンス米国務次官(軍備管理・国際安全保障担当)が今月27日、ロシアのリャプコフ外務次官と電話で会談。ジェンキンス氏は当初、情報共有の継続を提案したが、リャプコフ氏が応じず、米側は停止に踏み切った。
ロシアが核戦力の情報提供に応じないまま、米国が提供を続ければ、ロシアだけが条約の恩恵を得ることになる。元米当局者は同紙に「非常に残念だが、予想されていたことで適切な措置だ」と説明している。
プーチン氏は昨年2月のウクライナ侵攻開始以降、再三にわたり核の威嚇を行ってきた。今月に入ってもベラルーシへの戦術核兵器配備を表明。ベラルーシ側も28日、受け入れる方針を示した。バイデン政権が情報提供停止に踏み切ったことで、新STARTの実効性に不透明感が強まり、米ロ間の緊張がさらに高まる恐れもある。