くすぶる大リーグ優先 選手参加、起用に制限―WBC・戦い終えて(下)
2023年03月29日07時13分
21日(日本時間22日)に閉幕した第5回WBCは観客動員数が過去最多の130万人を突破するなど大会として着実な成長を示した一方、運営には米大リーグの意向を優先した影響がくすぶった。
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メジャー選手は負傷などに備えた保険加入が必要で、米国代表だった左腕カーショー(ドジャース)は、故障歴を理由に要件を満たせず参加を辞退。大会管轄外の活動が制限され、日本代表では大谷(エンゼルス)らが、本番前の実戦のうち最後の強化試合2連戦にしか出場できなかった。
大会の開催は大リーグ開幕前の3月。今回は野手に多くのトップ選手が名を連ねたが、投手はベストメンバーとは言い難い。あるベテラン投手は「この時期に試合で投げる準備はできていない。シーズン中にやってくれれば、もっと多くの選手が参加するのに」と話す。
ただ、大会を主催する米大リーグ機構と選手会は、開催時期の変更には消極的だ。米メディアによると、選手会のクラーク専務理事は「頭が痛くなるほど議論してきたが、完璧なタイミングはない。バランス的にこの時期がベストだろう」との見解を示した。
選手起用に関しても、代表チームは制限の中でのやりくりを強いられた。同時期のオープン戦と同様、調整の場と考えるメジャー球団も多く、代表チームに投手の登板日や投球回数を指定するケースも。メキシコは日本との準決勝を前に複数の投手がロースター外に。米国では登板予定のない投手が大会途中に所属チームのキャンプに戻り、デローサ監督は「彼の調整のためには仕方のないことだが、非常に残念だ」と不満をあらわにした。
大リーグ機構のマンフレッド・コミッショナーは、次回大会を2026年に開催すると表明。米メディアによると「野手と同レベルの投手陣が見たい」とも話した。真の世界一決定戦への発展には、大リーグ側が抱える課題の解決が欠かせない。 (ニューヨーク時事)