かつての「侍」から変貌 小技、堅実性にパワーも―WBC・戦い終えて(中)
2023年03月28日07時11分
かつて侍ジャパンは「スモールベースボール」がお家芸だった。小技や機動力を絡めて攻め、堅実に守る。聞こえはいいが、これはパワー不足の裏返し。今回のチームは違う。投打とも世界の潮流に沿う力強さを備え、覇権奪回へ突き進んだ。
一流メジャーが身近に 大きい大谷、ダルの影響力―WBC・戦い終えて(上)
栗山監督が掲げたのは「投手中心の戦い」。そこには剛腕という軸があった。準決勝のメキシコ戦で力投した佐々木朗(ロッテ)や山本(オリックス)ら、全員が150キロ以上の速球と落ちる変化球を持つ。力で押し、空振りを取ることで不運な当たりも減った。
他の若手も例外ではない。決勝の米国戦。22歳の戸郷(巨人)はトラウト(エンゼルス)から空振り三振を奪った。20歳の高橋宏(中日)らも続く。力勝負の結果は数字に表れた。日本の80奪三振は大会記録で、防御率2.29は今大会トップ。与四球率は最も低く、精度も保った。
攻撃では昨季までオリックスの吉田(レッドソックス)が準決勝の窮地を救う3ランなど勝負強さを発揮。不振に苦しんだ村上(ヤクルト)と岡本和(巨人)は決勝でソロホームランのそろい踏みを演じた。
大谷(エンゼルス)も擁し、過去にない重量打線が実現。攻撃力の指標となるOPS(出塁率に長打率を足した値)は2位で、四球と盗塁の数は最多をマークした。過去2大会は準決勝で1得点に終わって敗退しただけに、大きな進歩だ。
連覇を達成した2009年大会を知るダルビッシュ(パドレス)は言う。「投手の球も、野手の打球も全然違う。当時とはレベルが変わった」。日本で育ち、競い合い、汗と涙を流した末に得た世界最強の称号。たくましさを増した日本野球には、夢がある。