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18歳・木原、度胸と読みで決めたビクトリーレシーブ〔Tリーグ〕

2023年03月27日20時28分

決勝でプレーする木原美悠=26日、東京・代々木第2体育館

決勝でプレーする木原美悠=26日、東京・代々木第2体育館

  • 初優勝を果たしトロフィーを手にする木下神奈川の木原美悠(右から3人目)ら=26日、東京・代々木第2体育館

 卓球のノジマTリーグは26日、代々木第2体育館で女子決勝が行われ、レギュラーシーズン1位の木下神奈川が同3位の日本生命を3-2で破り、初優勝した。勝負は最終ビクトリーマッチにもつれ込み、18歳の木原美悠(エリートアカデミー)が伊藤美誠(スターツ)に持ち前の勝負度胸と戦術の読みで挑んで11-9で競り勝ち、悲願を達成した。日本生命は初シーズン以来の連覇が4で止まった。

琉球の優勝を決めた張本智和がラケットを投げた訳


 ◇ロングサービスからの強打連発も

 ビクトリーマッチは1ゲーム勝負。伊藤に2-4と先行されかけた場面で、木原がレシーブで2点を連取した。1本目はバックへのロングサービスをフォアで回り込んでストレートへ。次はフォア前へのサービスをバックで回り込み、相手のバックへフリックした。読み、打法、コースとも劣勢の場面とは思えない決断だった。これが最後の局面につながっていく。

 伊藤のサービスも3番シングルスの張本美和(木下アカデミー)戦から、いつにもまして練られていた。木原は6-4からまた逆転を許し、7-9と追い詰められる。

 だが、ここでロングサービスからラリーを挑む。バックを相手の両サイドへ連打して8点目。次もロングサービスからラリーにする。両選手がフォア、バックを打ち合い、12本目に伊藤のフォアがコートを割って9-9と追い付いた。観客2532人の興奮が最高潮に達するラリーだったが、1本ずつしっかり振ってボールをつかむように攻めたのは、木原の方だった。

 そして最後のレシーブ2本。序盤の2本とは逆に、伊藤は先にフォア前サービスを出してきた。これを木原がバックで回り込み、相手のフォア前にストップする。「それまでフォア前でミスが多かったので2本のうち1本は来ると思っていた」

 ただ、回り込みながら打たずにストップしたことで、意表を突かれたような伊藤の返球がコートを割った。木原としては、攻撃的ではないが「積極的」な選択だったという。

 そして次にバック側へロングサービスが来た。「予想していたら本当にそこへ来た」という木原は、回り込んで強烈なドライブレシーブを放つ。鮮やかに11点目を挙げて、5季目の悲願達成をチームにもたらした。

 ◇経験で培った戦い方

 「4年間ずっと優勝したいと言ってきてなかなかできなくて、みんなで毎日相手の対策とかしてきて、きょう勝てて本当によかった」と喜びをかみしめた。14歳だったTリーグ1季目から木下神奈川でプレーし、チームは過去2度、決勝に進んだが、木原は1季目のダブルスに出ただけ。3季目はリーグ最多タイのシングルス17勝を挙げながら、国際大会への出発で出られなかった。

 この間、チームの柱に成長し、ビクトリーマッチも5季で計16試合任された。Tリーグ独自ルールによる1ゲーム勝負は、実力に関係なく紙一重。木原も9勝7敗だが、Tリーグ初参加でビクトリーマッチが4試合目の伊藤と経験の差が出た。

 直前の4番シングルスで森さくらと接戦をしながら、「最後は思い切った方が勝ち」と自分に言い聞かせた。伊藤には「負けてもともと。5ゲーム、7ゲームなら負けたかもしれないけど」というが、昨年4月のアジア大会選考会でも4-2で勝っており、自信になるだろう。

 伊藤はビクトリーマッチを経験しながら、「相手が5ゲームマッチの1点目よりもっと思い切りやってくる」と感じていたという。この日はまさにそうだろう。

 木原の武器は思い切りだけではない。中澤鋭監督は「洞察力と戦術の変化がトップクラス。相手選手の作戦にすぐ気付く」という。短時間決戦に重要な木原の資質に託し、それがまさに土壇場で発揮された。

 ◇「WBC見てないです」

 試合後の記者会見ではいつも通り、おっとりしていた。プレーオフMVPの賞金30万円の使い道を聞かれて「料理にはまっているので食材を買いたいです」。ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)からの刺激を問われて「すみません、見てないです」。試合のことで精いっぱいだったという。

 最初の背番号が「51」で、イチロー(当時マリナーズ)にあやかったかと聞かれた時も「いえ、知らなかったです」と真顔で答えていた。

 今の背番号は「1」。チームが3季目の開幕前に背番号を決め直すため、選手の希望を募った。仲良しの長崎美柚(木下グループ)も「1」を考えたが、選手入場で最初に登場するのは気が引けて「11」にしたら、木原が「1」を希望していた。

 あどけなさとは裏腹に、「1番になる」強い意志で成長し、この日の読みと強打には、すごみさえ感じさせた。右シェークでバック側が表ソフトの異質攻撃型。中国勢が伊藤対策で研究し尽くしている戦型だが、身長164センチでリーチが長く、広角に打てて守れる強みがある。兄譲りのサービスも強力だ。

 5月の世界選手権個人戦(南アフリカ・ダーバン)、早田ひなに続いて2位につけるパリ五輪シングルス代表選考レースなどに、この喜びと自信がはずみをつけるか―。(所属の記載がない選手はTリーグのチームと同じ)

▽女子決勝 木下神奈川3-2日本生命
○長崎美柚、張本美和2-1早田ひな、赤江夏星(大阪・香ケ丘リベルテ高)
 平野美宇0-3早田ひな○
 張本美和2-3伊藤美誠○
○木原美悠3-2森さくら
○木原美悠1-0伊藤美誠

(時事通信社 若林哲治)

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