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「米国の裏庭」で増す影響力 総統歴訪直前、米台けん制―中国

2023年03月28日07時07分

中国の習近平国家主席=21日、モスクワ(AFP時事)

中国の習近平国家主席=21日、モスクワ(AFP時事)

  • 台湾の蔡英文総統(中央)=25日、台湾南部嘉義(AFP時事)

 【北京、台北時事】中国が「米国の裏庭」と呼ばれる中南米での存在感を増している。経済力を武器とした習近平政権の攻勢により、ホンジュラスは26日、80年以上も外交関係を維持していた台湾と断交し、中国と国交を樹立。蔡英文・台湾総統の米国と中米2カ国歴訪を前に、米台へのけん制の一撃となった。

「札束攻勢」で中国になびく 台湾と断交相次ぐ―中南米・カリブ海

 ◇米国の空白狙う
 米国は長らく中南米に影響力を及ぼしてきたが、近年は中国をはじめとするアジア太平洋やロシアの方が優先度が高い。習政権はその隙にニカラグア運河建設計画などの巨大事業に関与し、中米地域との関係を着実に強化してきた。
 台湾と外交関係を持つのは国際的発言力の小さい国が多いが、中国は2017年、海運の要衝であるパナマ運河を有するパナマと台湾の引きはがしに成功。米国の力の「空白地」に入り込み、途上国や権威主義国を取り込む手法は、習政権が今月仲介したイランとサウジアラビアの関係修復にも見て取れる。
 来年1月の台湾総統選を前に、中国は「台湾独立勢力」と敵視する民進党政権への圧力を強めている。ホンジュラスの切り崩しは、台湾の有権者に「民進党のせいで国際的孤立が深まっている」と思わせることも狙いの一つ。同様の動きは今後も続くとみられる。
 27日の共産党機関紙・人民日報系の環球時報は「ホンジュラスは台湾との最後の『断交』国ではない」と題する社説を掲載。「さらなる断交の波が(台湾を)待ち受ける」と主張した。
 ◇蔡政権に危機感
 経済支援や投資による中国の激しい外交攻勢に、蔡政権の危機感は大きい。蔡政権が発足した16年5月以降、台湾から中国へ乗り換えた国はホンジュラスで9カ国目だ。
 蔡氏は26日、動画による談話で「中国と無意味な金銭外交競争はしない」と断言した。ただ、途上国にとって巨額の経済支援はあらがいがたい魅力だ。台湾外交部(外務省)幹部は「金額ではとても中国に太刀打ちできない」と肩を落とす。
 経済力で劣勢の台湾が頼みとするのが「価値観外交」だ。蔡政権は米国など自由と民主主義を標榜(ひょうぼう)する多くの先進国の支持を集めることで、国際的な存在感と影響力を高めてきた。
 蔡氏は今月29日から4月7日の日程で外交関係を結ぶ中米グアテマラとベリーズを歴訪し、友好国のつなぎ留めを図る。また、経由地として4年ぶりに訪問する米国ではマッカーシー下院議長と会談する見通しで、米国との緊密な関係を誇示したい考えだ。

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