「サマーキャンプ」でクリミアに…ウクライナの子ども、家族と再会
2023年03月24日17時36分
【キーウAFP=時事】ウクライナの首都キーウに22日、ロシアの支配地域に連れ去られたウクライナの子ども17人を乗せたバスが到着した。デニス・ザポロジチェンコさんはバスから飛び出してきた10歳の息子を抱き止めると額にキスをした。続いて降りて来た娘2人も抱き締めた。(写真はウクライナの首都キーウで、子ども3人と再会したデニス・ザポロジチェンコさん〈右〉)
鉄棒で殴打、食事は劣悪 ウクライナ子供17人が帰還―占領地からロシア側へ連れ去り
子どもたちは、数か月にわたり保護者から引き離され、ロシア当局の管理下に置かれていた。
子どもたちの救出は、不法にロシア支配地域に移送させられたとされるウクライナの子どもの救出を手掛けるNGO「セーブ・ウクライナ」により実現した。
政府によると、侵攻開始からこれまでに1万6000人以上の子どもがロシアに連れ去られている。子どもたちの多くは、施設に入れられるか里子に出されているという。
ロシアは、これを否定。子どもたちを戦争の恐怖から守っているだけだと主張している。
だが、国際刑事裁判所は17日、ウクライナの子どもを違法に移送したことが戦争犯罪に当たると判断し、ウラジーミル・プーチン大統領に逮捕状を出した。
ザポロジチェンコさんと子どもたちは、昨年10月から離れ離れになっていた。
一家は当時、州都として唯一ロシアに占領された東部ヘルソン市に住んでいた。ザポロジチェンコさんは、奪還を目指すウクライナとロシアとの間で戦闘が激化すると考えた。
2014年にロシアに併合された風光明媚(めいび)なクリミア半島での「ロシアのサマーキャンプ」に子どもたちを避難がてら行かせた方がましだと判断したのだった。
ザポロジチェンコさんはAFPに対し、ロシア当局は「キャンプに1、2週間連れて行くだけだと約束した」と話した。「行かせるべきではなかったと気付いた時には遅かった」
■脅迫も
セーブ・ウクライナに協力している弁護士のミロスラワ・ハルチェンコさんは、子どもたちをキャンプに行かせるよう保護者が圧力をかけられたケースもあったと話した。
ロシア当局は「考える時間は1時間ある」「その前にウクライナ軍が来たら、子どもたちを殴り、レイプする米国の傭兵(ようへい)を連れてくるだろう」と言って、保護者らを脅したという。
保護者らはこれまで、子どもたちを引き取るには道中危険なクリミアに自ら行かなければならなかった。
セーブ・ウクライナは今回初めて、子どもを迎えに行けない保護者らの代理人として、連れ帰って来た。バスをチャーターし、ポーランドとベラルーシ経由でロシア入りし、クリミアで子どもたちを乗せた。
AFPが取材した子どもの話から、一定の政治的洗脳がされたことが分かった。
15歳のタイシャさんは「(ロシア)国歌を歌わなければ、反省文を書かされた。正月にはプーチンの演説を見せられた」と語った。
ザポロジチェンコさんの娘、ヤナさん(11)は「普通のキャンプと一緒だった」と話した。しかし、モスクワから視察が来た際には「歌ったり踊ったりするよう求められた」という。
イネサ・ベルトシさん(43)は、長期間離れている間に息子から子どもらしさが減ったと話した。息子はベルトシさんを真っすぐ見ながら「何があったか話したくない。お母さんが夜眠れなくなっちゃう」と言った。
ハルチェンコさんによると、子どもたちには全員、精神的支援が提供される。【翻訳編集AFPBBNews】
〔AFP=時事〕