岸田首相「罷免要求は論理飛躍」 放送法文書、高市氏譲らず―国会
2023年03月25日07時13分
放送法が定める政治的公平性の解釈に関する総務省の内部文書を巡り、野党は24日の参院予算委員会で政府への追及を強めた。立憲民主党は文書を官僚の「捏造(ねつぞう)」だと断言する高市早苗経済安全保障担当相は閣僚失格だと主張し、岸田文雄首相に罷免を要求。首相は文書が正確かどうかの精査が先決だとして応じなかった。
「引き続き文書の正確性を議論しなければならない。その段階でいきなり更迭うんぬんというのはあまりに論理が飛躍している」。首相は立民の石垣のりこ氏の罷免要求をこういなした。
政治的公平性に関し、総務省はかつて「番組全体を見て判断する」との解釈だった。高市氏は総務相時代の2015年5月の国会答弁で「一つの番組でも判断できる」との新解釈を表明。文書には礒崎陽輔首相補佐官(当時)が解釈の「補充」を同省に働き掛け、安倍晋三首相(同)や高市氏がゴーサインを出した経過が記されている。
石垣氏は「記述は捏造との認識は変わらないか」と高市氏に質問。高市氏は「ありもしないことをあったかのように書いている。だから捏造だと言った」と譲らなかった。
すると石垣氏は「捏造は犯罪だ。(高市氏には)告発義務がある」と指摘。高市氏は「告発するつもりはない」と苦しい答弁に追われた。石垣氏は次に首相に矛先を向け、「保身のため(捏造だと主張し)部下を売り飛ばす一点を取っても、もはや高市氏は任に堪えない」と即時更迭を迫った。
総務省文書の問題を国会で取り上げるのは立民と共産党が中心だった。しかし、24日は日本維新の会が参戦。立民、共産両党とは違う角度から追及した。
維新の音喜多駿政調会長は、放送法の解釈がゆがめられたか否かが最大の焦点にもかかわらず、捏造でなければ閣僚や衆院議員を辞すると高市氏が表明したことで、論点がずれたと指摘。「辞任する必要があるとは全く思わない。軌道修正しないか」と「捏造」発言の撤回を促した。
だが、高市氏は「文書に書かれているようなことはあり得ない」と応じなかった。
2023年度予算案は28日にも成立する見通し。その後は衆参両院の予算委が開かれる機会は少なくなり、総務省文書問題を追及する場も限られる。立民からは「政権を追い詰めるのは難しいかもしれない」(幹部)と焦りの声も漏れる。