警護・情報管理、野党が疑問視 「電撃訪問」岸田首相は成果訴え
2023年03月24日07時06分
参院予算委員会は23日、外交を主なテーマとする集中審議を行い、ウクライナ電撃訪問から帰国した直後の岸田文雄首相が出席した。首相は国会の事前承認を得ずに踏み切った異例の外遊の成果をアピール。野党は一定の評価を示しつつも、警護態勢や日本政府の情報管理を疑問視した。
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「この目で現地を見て、ゼレンスキー大統領とじっくり議論を行ったことで、現地の状況をより実感を持って把握できた」。首相は冒頭、戦地訪問の意義を報告した。
首相が帰国したのは23日午前6時20分で、予算委に臨んだのはその約7時間後。首相が外遊先からの帰国当日に国会で答弁するのは珍しいが、質問した野党議員からは「疲れが顔に出ておらず、びっくりした」(立憲民主党の田名部匡代参院幹事長)との声が漏れた。
野党が問題視したのは、首都キーウ(キエフ)に向かう中継地点となったポーランドの駅で列車に乗り込む首相の様子をNHKと日本テレビが撮影していたことだ。田名部氏は「電撃だったのか。安全確保や情報管理に問題があったのではないか」と追及。日本維新の会の浅田均氏は「(カメラマンが)スナイパーだったら一発で狙われる」と批判した。
首相は「安全対策、危機管理対策、情報管理に万全を期しており、今回の対応に特段問題があったとは考えていない」と反論したが、具体的な根拠は示さなかった。
首相が大統領に約束した装備品支援3000万ドル(約40億円)なども議論になった。浅田氏は「G7(先進7カ国)議長国としては額が少ないのではないか」と指摘。首相は「金額で比較すると少ないかもしれないが、日本らしい支援が大事だ。(既に提供した)越冬対策の発電機などは現地で大いに歓迎されていた」と理解を求めた。
大統領との共同声明に盛り込まれた対ロシア制裁強化の実効性にも疑問が呈された。立民の勝部賢志氏は日本たばこ産業(JT)の子会社がロシアで事業を続けており、制裁の抜け穴になっていると質問。浅田氏もロシアへの中古車輸出が増えているとして対応を求めた。
首相は「(JTの)検討状況を注視する」「関係国と緊密に連携し、適切に対応を考えなければならない」などと述べるにとどめた。