自民分裂、党内あつれき 維新は勢力拡大狙う―9知事選告示・統一地方選
2023年03月23日15時27分
9道府県知事選が23日告示され、4年に1度の統一地方選が幕を開けた。9知事選のうち奈良、徳島は自民党が候補を一本化できず分裂選挙に突入。選挙戦を巡り党内であつれきが生じ、今後の国政選挙への影響を懸念する声も出ている。奈良では、分裂する自民を横目に日本維新の会が大阪府外への勢力拡大を虎視眈々(たんたん)と狙っている。
◇共倒れ危惧
奈良では自民県連会長を務める高市早苗経済安全保障担当相が主導し、候補の若返りを図るべく元総務官僚の平木省氏(48)を擁立した。しかし、過去の選挙で自民の応援を受けてきた現職の荒井正吾氏(78)が譲らず5選出馬を表明。高市氏は立候補を取りやめるよう説得を試みたが失敗に終わった。
自民の分裂をほくそ笑むのが維新だ。元生駒市長の山下真氏(54)を擁立。奈良を「統一地方選で最大の選挙」(馬場伸幸維新代表)と位置付け、大阪以外で初めてとなる公認知事の座を狙う。19日には維新共同代表で大阪府知事の吉村洋文氏(47)が奈良入りし街頭演説をこなすなど、早速攻勢を掛けている。
分裂を回避できず、自民県議は「維新にどうぞと言っているようなものだ」と嘆く。県連内には平木、荒井両氏が保守票を奪い合うことで共倒れになることへの懸念が広がり、幹部は「(次期衆院選などにも)間違いなく影響する」と危機感を募らせる。
徳島は自民の元国会議員2人が名乗りを上げたが、自民県連は6選を目指す現職を推薦。前回に続く分裂選挙となり組織の亀裂が深まっている。
◇対維新一本化ならず
大阪は地域政党「大阪維新の会」と非維新勢力が火花を散らす。現職の吉村氏は「今やっている改革を継続する」と強調。大阪維新は知事選と同日選の大阪市長選には府議の横山英幸氏(41)を擁立し、知事・市長の両ポストを引き続き独占することを狙う。
自民府連は知事選では地元経済人らによる政治団体「アップデートおおさか」が擁立した法学者の谷口真由美氏(48)を、市長選では市議の北野妙子氏(63)を自主支援する。17日には党本部から森山裕選対委員長が谷口氏の激励に訪問。維新が進めるカジノを含む統合型リゾート(IR)の誘致への反対などを掲げ、「維新1強」に風穴を開けようと必死だ。
ただ、府連内は一部の府議が谷口氏とは憲法観が異なるとして支援に反対するなど、一枚岩になり切れていない。知事選では共産党が推薦する元参院議員の辰巳孝太郎氏(46)も出馬し非維新候補の一本化は実現しなかった。
◇与野党対決色薄く
一方、神奈川など4知事選で与野党が現職に相乗りし、全体的に対決色の薄さは否めない。北海道では立憲民主党を中心とした野党共闘が実現。難航しながらも与党系の現職への対抗馬擁立にこぎ着けた。立民道連の逢坂誠二代表は「この選挙戦で不戦敗はあり得ない」と戦い抜く決意を示している。
大分は与党系の元大分市長と共産、社民の地方組織が支援する元参院議員の一騎打ち。元参院議員は4年前の参院選では野党統一候補として当選したが、今回の知事選では政党色を薄めることで幅広い支持獲得を狙っており、立民、国民民主党は自主投票とした。