米国の戦犯追及に反発 エチオピアとエリトリア―21世紀最悪・北部ティグレ州紛争
2023年03月24日07時08分
【アディスアベバAFP時事】エチオピアとエリトリアがそろって米国に反発している。2020年から2年間に及んだエチオピア政府軍と北部ティグレ州の反政府勢力「ティグレ人民解放戦線(TPLF)」の戦闘で、米国は戦争犯罪や人道に対する罪が繰り返されたと非難した。エリトリアはエチオピア政府と手を組んでティグレ州に軍を派遣していたとみられている。
エチオピア外務省は21日、米国の非難に対し「偏った内容かつ扇動的だ」と強く反論した。エリトリア外務省も数時間後に続き「根も葉もない話の上にわが国の名誉を汚している」と反発してみせた。
ティグレ州の戦闘は現在、静かになっている。ブリンケン米国務長官は15日、エチオピアでアビー首相らと会談したばかりだが、帰国後の20日、エチオピア軍やエリトリア軍、さらにティグレ人と敵対する北西部アムハラ州の軍事組織を挙げ、虐殺や性暴力を繰り返したと非難した。
米国務省は20日、各国の人権状況をまとめた22年版の報告書を発表する中で、エチオピアやエリトリアにも言及した。記者会見したブリンケン氏は「法と事実を精査した」結果だとして、エチオピア、エリトリア両国の戦争犯罪を糾弾した。「偶然とか単なる戦争の副産物とかではないのだ。計画的かつ故意に行われている」と訴えている。
これに対し、エチオピア外務省は「あふれるばかりの証拠があるのに性暴力をはじめ人権侵害の訴えから何か一つ罪を逃れていないか」と反論。今回の紛争で、エチオピア・エリトリアの連合軍によって粉砕された格好のTPLFに対する米国の批判が弱いことに不満を示した。
エリトリア外務省の声明も「TPLFによる犯罪の山が軽視され隠されている」と米国を非難。「米国はエリトリアに間違った敵意を抱き続けており、われわれを悪魔にしようとしている」と被害者意識をむき出しにした。
TPLFはかつてエチオピアを支配したティグレ人が率いている。アビー政権は20年、TPLFが軍を攻撃したと主張して、軍事攻撃に踏み切った。2年に及んだ激しい戦闘で、米国は約50万人の住民が死亡したと推計している。ロシアによるウクライナ侵攻を上回る犠牲は、21世紀で最も凄惨(せいさん)な戦争の一つになることは間違いないと考えられている。