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米、中東での影響力低下 対中競争の「舞台」に―迫られる関係再構築

2023年03月20日07時03分

2003年3月19日、ホワイトハウスで国民向け演説を行い、イラク戦争開戦を発表するブッシュ(子)米大統領(当時)(AFP時事)

2003年3月19日、ホワイトハウスで国民向け演説を行い、イラク戦争開戦を発表するブッシュ(子)米大統領(当時)(AFP時事)

 【ワシントン時事】米国主導のイラク開戦から20年。「中東の民主化」を掲げた介入は泥沼化し、米国が中東への軍事的関与を後退させる結果となった。間隙(かんげき)を突いた中国が影響力を増し、中東は米中競争の「舞台の一つ」(米専門家)になりつつある。米国は安全保障面だけではない新たな関係の構築を迫られている。

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 ◇混乱した占領統治
 米国は2003年3月19日(日本時間同20日)、イラクへの攻撃作戦を開始。圧倒的な軍事力を背景にフセイン政権を打倒し、6週間ほどで勝利宣言した。しかし、開戦の根拠としていた大量破壊兵器は発見されず、ブッシュ(子)政権の威信は失墜した。イラクの民主化を目指す占領統治は難航し、治安が悪化。米軍兵力は一時17万人を超える規模に膨れ上がった。
 開戦前、米国務省で戦後統治に関する報告書をまとめた米シンクタンク「大西洋評議会」のトーマス・ウォーリック非常勤上級研究員は「軍事作戦は成功したが、主要な戦闘の完了までに必要な(統治)計画が用意されていなかった」と指摘。国務省と国防総省との連携不足などが占領統治の混乱を招いたと振り返る。
 ◇「愚かな戦争」
 イラク戦争を「愚かな戦争」と批判したオバマ大統領(当時)は11年12月、駐留米軍を撤退させ、戦争終結を表明。オバマ氏は米軍戦力を中東からアジア太平洋地域に移す「リバランス(再均衡)政策」を目指したが、イラクでの「力の空白」は過激派組織「イスラム国」(IS)の台頭を招き、掃討作戦に追われる結果となった。
 国際社会で存在感を増した中国への対抗を重視して中東への関与を縮小する流れは続き、トランプ前大統領は対IS戦を行っていたシリアから米軍を撤収させた。バイデン大統領も21年8月、アフガニスタンからの米軍撤収を強行。イラクでの戦闘任務も終了した。
 ◇非軍事の課題直面
 米国は10年代に起きた「シェール革命」を経て世界最大の産油国となり、中東への関心を低下させた。代わりに台頭したのが経済大国となった中国で、最近ではサウジアラビアとイランの外交関係修復を仲介し、国際社会に影響力を誇示した。
 ウォーリック氏は中東が「大国間競争の舞台の一つとなりつつある」と指摘する。米国が中東の優先順位を低下させたことで、中東で米中競争が過熱する可能性が出てきた。
 その上で、中東諸国は非軍事的な課題にも直面しており、「求められているものは軍事的な安全保障だけではない」と説明。中国に対抗する上で、軍事以外の気候変動や災害対策、サイバーセキュリティーなどの分野で関係強化を図っていくべきだと強調している。

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