庶民の足「ジプニー」存続の危機 政府の近代化政策で―フィリピン
2023年03月18日13時34分
【マニラ時事】フィリピンの街中を縦横無尽に走る乗り合いタクシー「ジプニー」が存続の危機に立たされている。米軍の車両や日本の中古トラックを改造したカラフルで個性豊かな車体は、マニラ首都圏などの風景にはなくてはならない存在。庶民の移動手段としても大きな役割を果たしているが、古い車体から吐き出される排ガスなどを理由に、政府が進める公共交通車両近代化プログラムによって追い詰められつつある。
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ドゥテルテ前政権下の2017年に始まった同プログラムは、安全性向上や二酸化炭素(CO2)の排出量削減を目指し、ジプニーから輸入ミニバスへの置き換えを推進する。約35万人いるとされるジプニーの運転手が営業を続けるには、今年末までに協同組合に入り、車両を買い替える必要がある。
政府は補助金の利用を呼び掛けるが、ミニバスの価格は約240万ペソ(約580万円)以上。長年ジプニーを運転してきたウェニフレッド・ペレスさん(69)は「高過ぎる。優遇ローンでも7年で返さなければならないなんて」と困惑気味。さらに、協同組合に入ると雇用される形となり「個人事業主として1日3000ペソ(約7300円)あった稼ぎが3分の1から5分の1に減ってしまう」と嘆く。
3月上旬には複数の団体がストライキを敢行。大手ジプニー運転手団体の幹部は「どうして車両の改良では駄目なのか。ミニバスは日本や韓国、中国から輸入するというが、政府は国内のジプニー製造業者も守るべきだ」と訴える。
「(買い替え期限を)あと5年延ばしてくれれば、子供たちも学校を卒業するのだが」。ペレスさんは望みを託すかのように視線を上に向けた。