シャトル外交復活で成果 批判封印とは程遠く―韓国大統領
2023年03月17日07時09分
韓国の尹錫悦大統領は16日の岸田文雄首相との首脳会談で、相互に頻繁に行き来する首脳シャトル外交の再開で合意した。大統領選時からの主張を実現させたのは大きな成果。しかし「屈辱外交」という批判は依然強く、思惑通りに世論の反発を抑えられるかは不透明なままだ。
尹氏は共同記者会見で「就任当初の韓日関係を考えると、岸田首相と一緒に会談結果を説明する意味は格別だ」と感慨深げに語った。会見終了後には、最前列の日本側記者と次々に握手して会見場を後にした。
6日に発表した元徴用工問題の解決策では、韓国が日本に求めていた日本政府の謝罪や、賠償を肩代わりする財団への被告企業の参加は得られず、韓国内で約6割が反対。尹氏は、間髪を入れずに訪日して成果を示すことで、批判を和らげたい思惑があったとみられる。
さらに、経団連と韓国の全国経済人連合会(全経連)は会談に先立ち、「未来パートナーシップ基金」の創設を発表して後押し。未来志向の事業に日本企業が寄与することで、批判を少しでも相殺しようとした。
一方で、生存している元徴用工訴訟の原告3人は財団からの金を受け取らない意向を表明。そのうち1人と別の原告遺族計7人は15日、被告の三菱重工業が韓国内に持つ債権を回収するため、差し押さえた孫会社の支払代金の引き渡しを求め提訴した。問題決着とは程遠い状況だ。
尹氏と近い与党幹部は先週、ひそかに訪日して自民党有力者らと接触。韓国の世論の雰囲気を伝え、「首脳会談で岸田首相の口から直接『痛切な反省と心からのおわび』という過去の談話の文言に言及してほしい」と働き掛けた。しかし、岸田首相がこれまでの表現から踏み込むことはなかった。
それでも尹氏は会見で、1965年の日韓請求権協定に基づき、韓国政府が補償してきたことも説明。2018年の韓国最高裁判決を「それまでの政府の立場、請求権協定の解釈と異なる判決」と言い切り、正面突破を図った。
尹氏は会見で「(98年の日韓)共同宣言の精神を発展的に継承し、不幸な歴史を克服し、協力の新時代を開く第一歩となった」と強調した。次回の岸田首相の訪韓で新たな宣言を打ち出し、韓国国民に成果を実感させたい意向とみられる。