パキスタンで前首相逮捕巡りせめぎ合い　衝突で負傷者、深まる政治混迷

　【ニューデリー時事】パキスタン当局がカーン前首相を逮捕する方針を打ち出し、カーン氏とせめぎ合いが続いている。クリケットの元スター選手で政権批判を繰り返す同氏の人気は依然高く、逮捕されれば政治の混迷が一段と深まりかねない。治安当局と支持者の衝突で、既に６０人以上の負傷者も出ている。

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　「逮捕は単なるドラマにすぎず、真の狙いは（私の）拉致と暗殺だ」。カーン氏は１５日、東部ラホールにある自宅が警察や治安部隊に包囲される中、ツイッター上でこう訴えた。警察は逮捕を試みたものの、同氏率いる野党「パキスタン正義運動（ＰＴＩ）」の支持者に阻まれ、日をまたぐにらみ合いの末にいったん撤収した。
　カーン氏は、首相在任中に外国の要人や高官から贈られた高級時計などについて申告せず、売却した疑いが持たれている。パキスタンの法律では、政府高官は贈答品を全て政府に申告する必要がある。
　カーン氏は刑事訴追の可否を判断するため再三にわたって出廷を命じられたが、安全上の懸念を理由に拒否。このため裁判所が１３日、逮捕状を発付した。
　女性判事らを脅迫した容疑などでもカーン氏は捜査対象になっている。警察は今月上旬にも同氏を逮捕するため自宅に赴いたが、不在だったため引き返していた。
　地元報道によると、サナウラ内相は１４日、「カーン氏を逮捕し、出廷させる」と述べ、強硬姿勢を鮮明にした。別の閣僚は「政党ではなく武装したギャング集団に成り下がった」とＰＴＩを非難。これに対し同氏は無罪を訴え、出廷する代わりに逮捕手続きを取り下げるよう求めている。
　カーン氏は昨年４月、不信任決議可決により失職した。同１１月、反政府デモを率いて行進中、銃撃を受け脚を負傷。その後治療を受け、退院した。