米無人機の回収焦点 墜落現場は水深1500メートル―ロシア「可能」と強調
2023年03月17日07時12分
【ワシントン時事】米軍の無人機MQ9が黒海上空でロシア軍の戦闘機と衝突し、墜落した問題で、墜落機の回収が焦点に浮上している。ロシアは軍事機密を含むと見なされている無人機の回収に全力を挙げる構えで、米国は警戒を強めている。
「(墜落現場の)水深は恐らく4000~5000フィート(約1200~約1500メートル)で、回収は極めて難しい」。米軍制服組トップのミリー統合参謀本部議長は15日の記者会見で、作業の困難さを指摘した。
ミリー氏は、衝突した無人機がばらばらになったとの見方も表明。国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官もCNNテレビで「回収できるかどうか分からない」と弱気な姿勢を見せた。
ロシアのウクライナ侵攻以来、トルコは母港に戻る軍艦を除く全ての国の軍艦のボスポラス海峡通過を禁止した。このため、米軍は黒海に艦船を展開しておらず、回収作業を行う場合はトルコの許可を得る必要があるとみられる。
無人機は、ロシアが一方的に併合したウクライナ南部クリミア半島に近い海域に墜落したとされ、ロシアは回収に前のめりだ。同国のパトルシェフ安全保障会議書記は「回収しなければならない。必ず着手する」と強調。ナルイシキン対外情報局(SVR)長官も「(回収・分析することは)技術的に可能だ」との認識を示した。
これに対し米国は、回収を断念しても問題は生じないと予防線を張ると同時に、ロシアをけん制している。ミリー氏は「墜落機にもはや価値はない」と語り、墜落直前に無人機のソフトウエアから機密データを消去したことを示唆した。
国際法上、海底に沈んだ無人機の所有権は米国にある。だが米ロは、これまでも法を度外視した機密情報の奪い合いを演じてきた。
米中央情報局(CIA)は冷戦時代の1974年、太平洋で沈没した旧ソ連の潜水艦を秘密裏に回収。この事実はその後の米メディアの報道で判明したが、CIAは回収計画に関する問い合わせに「肯定も否定もできない」と応じたことで知られる。