72年ぶり除名、最後まで慎重論 与野党、懲罰見直し検討へ
2023年03月16日07時03分
政治家女子48党のガーシー(本名・東谷義和)氏が15日、除名処分により参院議員の身分を失った。参院本会議の採決では出席議員のほとんどが賛成票を投じたが、「議員の身分は重い」と慎重な検討を求める声も最後まで残った。与野党は懲罰制度の見直しを検討する方向だ。
「ガーシー君を除名する」。尾辻秀久参院議長は15日の本会議での採決後、こう宣告した。72年ぶりとなる議員除名が決まった瞬間だ。
ガーシー氏は昨年夏の参院選比例代表で、旧NHK党から立候補し、初当選した。だが、同8月、同10月召集の臨時国会に出席せず、今年1月召集の今国会も欠席を続けた。この間、国庫から歳費、調査研究広報滞在費、期末手当を合わせて2013万1590円(日割り計算による一定額返納後は1944万7589円)が支給された。
与野党には当初「除名を急ぐべきだ」(立憲民主党幹部)との声もあった。ただ、慎重論もあり、今年1月末にガーシー氏に議長名で国会登院を求める「招状」を出し、2月下旬に「議場での陳謝」の懲罰を科すなど「丁寧な手続き」(自民党幹部)を重ねてきた。
ほぼ賛成一色の除名決定を受け、自民党の世耕弘成参院幹事長は記者団に「明確に参院の意思を表明できた」と強調した。立民の田名部匡代参院幹事長も「全国民の代表との自覚が全くなかった」と語った。
ガーシー氏側は猛反発する。同氏は参院選で「登院しない」と公約し、28万票超の個人票を獲得した。政女党の浜田聡氏はこの日の本会議で「選挙権の侵害だ」と訴えた。
除名慎重論は野党の一部で最後まで消えなかった。社民党の福島瑞穂党首は15日の記者会見で「除名やむなし」としながらも「議席はその人を応援しているたくさんの人のものだ。除名は最後の最後の最後の手段だ」と指摘。れいわ新選組は除名権乱用の「入り口となることを危惧する」とし、同党所属の参院議員5人のうち4人が採決を棄権・欠席した。
制度見直しを求める意見も出ている。国会法が定める懲罰は(1)除名(2)登院停止(3)陳謝(4)戒告―の四つ。「除名と登院停止の間に幅があり過ぎる」(公明党の石井啓一幹事長)との声があり、世耕氏も15日、「何らかの方向性を探る必要があるかもしれない」と語った。
立民と日本維新の会は、正当な理由なく国会欠席を続ける議員の歳費について4割を差し止める議員立法を国会に提出した。自民党内には歳費受給を保障した憲法49条と整合性が取りにくいとの意見がある。