重なる災害、旅館苦境に 再建めど立たず「廃業検討」も―福島県沖地震、16日で1年
2023年03月16日07時04分
福島、宮城両県で最大震度6強を観測した福島県沖地震から、16日で1年。住宅被害は5万6000棟を超え、2年連続で地震に見舞われた地域の旅館などでは、再建のめどが立たず「廃業を検討している」との声も聞かれる。新型コロナウイルスの影響で地域の観光業全体が落ち込んだままで、業者は営業再開に苦慮している。
震度6強を観測した両県の3市2町のうち、福島県相馬市など1市2町は、2021年2月にも同規模の地震に襲われた。相馬市観光協会によると、宿泊施設が集まる松川浦の旅館や民宿では、営業を再開したのは半数以下の10軒にとどまる。
松川浦観光旅館組合長で、「丸三旅館」を営む管野正三さん(62)は「あらゆる壁が落ちて、館内から空が見えた」と昨年の地震を振り返る。度重なる災害で周囲には疲弊感が漂っているといい、「東日本大震災の時は、一体感も前向きな気持ちもあったのに」とこぼす。
約4カ月かけて修繕し、今年1月から営業を再開したが「(物価高騰で)電気代だけで月40万円。何のために再開したのか分からない」と吐露した。
同地区の宿泊業者の多くは、震災による借入金の返済も続いている。国の補助金を使って再出発を図ろうにも、建物へのダメージはこれまでで最も深刻で「運転資金が手元に残らない」と断念する業者もいるという。
最大震度5強を記録した仙台市。市内有数の観光地の秋保地区では復旧が進み、被災した旅館のほとんどが昨年12月までに全面的に営業を再開した。ただ、21年の地震でも大きな被害を受けた一部旅館では、工事を続けながらの営業が続く。
配管設備や渡り廊下の損壊で、1億5000万円以上の被害が出た「緑水亭」では、復旧工事が6月末に完了する見込みだ。若おかみの高橋知子さん(47)は「地震被害やコロナ禍で、この3年のうち9カ月以上休館したが、今後の旅行需要の拡大に期待している」と話した。
秋保温泉旅館組合の佐藤司事務局長(55)は「客足は戻ってきているが、コロナ禍の従業員離れで人材が不足している。観光業全体の危うさを感じる」と話す。ただ、5月には同地区で先進7カ国(G7)閣僚会合が開催される予定で「地域で連携している仲間たちのために、頑張らなければ」と意気込んだ。