「新興財閥の制裁解除」訴え? リベラル派署名に波紋―ロシア
2023年03月16日07時07分
ロシア有数の富豪である新興財閥(オリガルヒ)がウクライナ侵攻で科された制裁を巡り、その解除を訴えて「リベラル派が署名した」とされる書簡が流出した。リベラル派は戦争に反対し、本来はプーチン政権に融和的な新興財閥と相いれない立場。反体制派指導者アレクセイ・ナワリヌイ氏の側近も支持したと伝えられ、波紋が広がっている。
この富豪はロンドン在住でユダヤ系のミハイル・フリードマン氏。共同保有するロシアの民間最大手銀行アルファバンクは、西側諸国から資産を凍結され、同氏個人も制裁対象となった。
フリードマン氏はウクライナ西部リビウ生まれ。開戦早々、侵攻に反対する立場を従業員に向けて表明したとされるが、クレムリン(大統領府)に協力的だとも指摘される。問題の書簡に署名された経緯には不明な点も多く、欧州連合(EU)の心証を良くして制裁の解除を勝ち取ろうと、フリードマン氏がリベラル派を利用したという見方もある。
英紙フィナンシャル・タイムズなどによると、フリードマン氏支持に担ぎ出されたリベラル派には、2021年のノーベル平和賞を受賞した独立系紙「ノーバヤ・ガゼータ」のドミトリー・ムラトフ編集長も含まれる。ムラトフ氏は署名を巡り、ウクライナのユダヤ人慰霊碑整備を推進する趣旨だと弁明した。
中でも問題になったのは、ナワリヌイ氏率いる反汚職団体の幹部2人による署名。団体は新興財閥に制裁を科すよう西側諸国に呼び掛けていたからだ。うち1人は署名疑惑を否定していたが、書簡の流出を受けて「過ち」を認め、政治活動休止を宣言した。
獄中の野党指導者イリヤ・ヤシン氏は14日、自身も署名した経緯を通信アプリで説明。フリードマン氏の「反戦」の立場を紹介した上で「プーチン大統領に近い新興財閥と同じ制裁リストに載せるのは公正と思えない」と主張した。