軍事対立のリスク浮き彫り 米無人機、ロシア軍機と衝突―黒海上空の国際空域で
2023年03月16日07時06分
【ワシントン時事】米軍は14日、黒海上空の国際空域で米空軍の無人機MQ9がロシア軍の戦闘機と衝突し、墜落したと発表した。ロシアのウクライナ侵攻以来、米ロ両軍機の衝突は初めて。米ロの緊張が高まる中、予期せぬ形で軍事対立が激化するリスクが改めて浮き彫りとなった。
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米軍は声明で「ロシア人操縦士の攻撃的な行動は危険であり、誤算や意図しないエスカレーション(対立の激化)につながる可能性がある」と非難した。
米軍によると、衝突は現地時間14日朝(日本時間同日午後)に発生。ロシア軍のスホイ27戦闘機2機が米無人機に対して燃料を投棄したり、前方を遮ったりするなどの危険な妨害を繰り返した。その後、ロシア軍機のうちの1機が無人機のプロペラと衝突した。
一方、ロシア国防省は声明で「ロシアの戦闘機は兵器を使用せず、無人機との衝突もなかった」と否定。さらに「無人機は急激な動きの結果、制御不能に陥り、水面に衝突した」と主張した。ロイター通信によると、ロシアのアントノフ駐米大使は米国務省に召喚された後、「われわれはこの事案を挑発と見なしている」と米国を批判した。
米国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官は「黒海上空でロシア軍機が米軍機を妨害するのは珍しいことではない」とする一方、「今回は米軍機が墜落する原因になったという点で特筆に値する」と強調した。この衝突はバイデン大統領にも報告された。
ウクライナ侵攻以降、2大核保有国の米ロは直接対決の回避に躍起となってきた。米国はロシアを過度に刺激するのを恐れ、戦闘機や長距離ミサイルのウクライナへの供与を見送ってきた。一方、ロシアも米国を含む北大西洋条約機構(NATO)との直接対決は避けてきた。
ただ、米国家情報長官室は今月公表した世界の脅威に関する年次報告書で、「ロシアは恐らく米国やNATOとの軍事衝突を望んでいないが、それが起こる可能性はある」と指摘したばかり。今回の衝突でもロシア軍機が意図的に墜落させていたことが判明した場合には、一段と緊張が強まりそうだ。