マスク緩和「少数派に配慮を」 新たな同調圧力を懸念―意思表示マークの考案者
2023年03月15日13時32分
新型コロナウイルス対策のマスク着用が13日から個人の判断となった。コロナ禍では着用を強要する「マスク警察」が出現。事情があってマスクを着けられない人たちにも厳しい目が向けられる中、理解を呼び掛ける啓発活動も広がった。今度は外せない人への同調圧力が強まる可能性もあり、活動の発起人の女性は「少数派の人たちの生活や尊厳を守り、みんなで考えていく社会になれば」と願う。
「脱マスク」本格化、夏ごろか 「周囲の目」重視の傾向―専門家指摘
千葉県流山市でカウンセリングルームを運営する鈴木玲嘉さん(53)は、病気や障害などの理由でマスクを着けられない人がいることを知り、2020年6月に「わけがありますく」プロジェクトを立ち上げた。家族5人分のコロナ給付金計50万円を元に知り合いのデザイナーらに声を掛け、「マスクをつけられません」と書かれたイラスト付きのバッジを作成。無料で配布したところ、わずか10日で2000個がなくなった。
困っている人が予想以上に多いと分かり、その後は自治体や特別支援学校などと連携して、意思表示アイテムの配布と啓発を進めた。アイテム作成のために鈴木さんらがデザインを提供した自治体は約70に上る。
千葉県松戸市の主婦(62)は、同居する長男(32)と買い物に行く際などにバッジを活用している。重度の知的障害がある長男はマスクを着けてもすぐに外してしまうといい、「(周囲に)説明する回数が減り、気が楽になった」と明かす。
着用ルールの緩和を受け、プロジェクトは終了する。鈴木さんは「本来は感染予防のためのマスクが独り歩きした」と感じており、「国で統一のマークを作るなど、対応してほしかった」と残念がる。
その上で、今後は逆にマスクを外せない人が非難されるような風潮になることを懸念する。「人はそれぞれ事情を抱えて生活しており、それらが見えない時もある。変だな、おかしいなと感じても、一呼吸置いて考えることができたら、互いに暮らしやすくなると思う」と話した。