台湾統一へ即応体制 「自立自強」米に対抗―中国
2023年03月13日17時36分
中国全国人民代表大会(全人代)が閉幕し、習近平国家主席にとって3期目の体制づくりが完了した。習氏の周囲は「イエスマン」で固められ、ブレーキ役はもはや不在。ウクライナ侵攻に踏み切ったプーチン・ロシア大統領の姿とも重なる。「中国共産党の悲願」である台湾統一に、たった1人の判断で突き進める即応体制が整った。
◇経済・国防一体化
「一体化した国家戦略の体系と能力を高めることが新たな任務だ」。濃緑色の人民服に身を包んだ習氏は全人代会期中の8日、軍の代表らが出席した会議で、こう命じた。「一体化」とは、科学技術の向上や経済発展を国防力強化につなげることを指す。台湾への侵攻に踏み切れば、激しいハイテク戦が想定される。13日の演説では「科学技術の『自立自強』能力を引き上げなければならない」と述べ、独自技術の確立を求めた。
この背景には、米中対立の深まりがある。米国が主導する半導体の対中輸出規制強化など「中国包囲網」の形成で、軍事転用が可能なハイテク製品の調達はさらに困難になることが予想されている。
習氏は、6日の会議で「米国を中心とする西側諸国はわれわれを全方位的に封じ込めて圧力をかけ、かつてない困難をもたらしている」と、米国を名指しで非難した。全人代は12日、2018年にロシア製兵器購入を理由に米国の制裁対象になった李尚福氏を国務委員兼国防相に充てる人事を決定。米国に対抗していく姿勢が、全人代を通じて鮮明になった。
習氏をサポートして台湾内の世論対策なども行う国政助言機関・全国政治協商会議(政協)のトップには、党序列4位の王滬寧氏が就任した。王氏は、党内屈指の理論家で、習氏が掲げる「中華民族の偉大な復興」の理念もつくったとされる。全人代では、首相に起用された序列2位の李強氏を交え、習氏と3人で親しげに話し込む様子が注目された。
◇「27年前後」意識
人事に加えて、幅広く有事を想定した体制が強化された。全人代は、法律制定の手続きなどを定めた「立法法」を改正し、緊急の状況下では1回の審議だけで法案採決が可能になった。全人代開幕に先立つ1日には、予備役将兵の待遇などを定めた「予備役人員法」を施行。予備役将兵を「国家武装力の構成員で、戦時に現役部隊を補う重要な資源」と位置付けた。
習氏の国家主席としての3期目任期は28年まで。その前年は軍創立100年の節目で、「台湾問題の解決に当たり、習氏は27年前後を強く意識している」(西側外交筋)とみられている。(北京時事)