裁判官頼みの「再審法」 不備指摘、日弁連が改正案―袴田事件
2023年03月14日09時07分
有罪確定後の裁判のやり直しを定めた「再審法」について不備が指摘されている。検察側が保管していた証拠が新たに開示されて再審開始決定につながったケースもあるが、こうしたルールの定めはなく、職権を持つ裁判官次第とも言われる。
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再審法は、制度を定めた刑事訴訟法第4編の別称。19の条文に、検察側の証拠開示といった手順などは明文化されていない。「三審制の例外」(ベテラン裁判官)扱いで、通常の裁判と同様にルールを定めると三審制の法的安定性が揺らぎかねないと懸念の声もある。
一方、審理の進め方は裁判官によってまちまちだとして「再審格差」が指摘される。日弁連は今年2月、弁護人の請求に対する証拠開示制度に加え、審理の長期化を防ぐための検察官による不服申し立ての禁止などを盛り込んだ改正案をまとめ、法務省などに提出した。
再審制度に詳しい青山学院大の葛野尋之教授(刑訴法)は、戦後の法改正で予審判事が全証拠を吟味していた職権主義から移行した際の「構造的な問題」を指摘する。現行は検察官や被告側に主導権を委ねる「当事者主義」だが、再審法の規定はほぼ変わらなかったとし「制度は職権主義なのに、裁判所には全部の証拠がなく、有効に機能する仕組みが欠けている」と強調する。
その上で「捜査機関、国が誤りを犯さないというのは独裁、専制国家の発想。誤判救済は法的安定性よりも重要で、見直しが必要だ」と話した。