長期化する不動産不況 人口減で需要先細り―習指導部の対策急務・中国
2023年03月11日17時26分
中国で不動産不況が長期化している。関連産業も含めて国内総生産(GDP)の3割を占めるとされる不動産市場のてこ入れは、景気回復を急ぐ習近平指導部にとって喫緊の課題だが、住宅需要は先細りが予想されており、効果的な対策を打ち出せるかは不透明。特に人口減と高齢化が同時に進む地方で事態は深刻さを増している。
◇止まらぬ都市への流出
雲南省紅河ハニ族イ族自治州の箇旧市。「スズの都」として知られ、市内には関連の施設が立ち並ぶ。だが、繁栄を支えてきたスズの生産量は年々減少。2003年には自治州政府も隣の市に移転した。鉱山労働者や公務員が相次いで街を離れ、人口が急減した。
市内では築20年の中古住宅が1平方メートル当たり2424元(約4万7000円)で売られていた。業者は「もっと古い物件なら1000元台もある」と話す。省都の昆明市では1万5000元、首都の北京市では10万元を超えるケースも多く、箇旧の安さが際立つ。
中国の人口は21年をピークに減少に転じた。都市部への流出も加わり、地方では住宅需要の落ち込みが一段と加速する可能性が高い。雲南省の不動産関係者は「田舎では物件はほぼ売れない」とあきらめ顔だった。
◇地方財政を直撃
中国の不動産市場は、開発大手の中国恒大集団の経営危機が表面化した21年ごろから急速に冷え込んだ。きっかけとなった政府による開発業者への融資規制強化は既にほぼ撤回されたものの、22年の不動産開発投資は前年比10.0%減と低迷している。
不動産不況は地方政府の財政も直撃した。地方政府の財源のうち、国有地の使用権譲渡収入は大きな比重を占めるが、買い手の開発業者が資金繰りに苦しむ中、22年は23.3%減と落ち込んだ。北京で開催中の全国人民代表大会(全人代、国会)で提示された政府活動報告は「一部の地方政府の財政難がさらに深刻になっている」と明記。政府内でも危機感が強まっているもようだ。
◇建設工事はストップ
工業団地が広がる四川省資陽市雁江区の一角では、5年以上にわたってマンションの建設工事が中断していた。近くの公園で子供を遊ばせていた30代の女性は「進学や就職で市外に出た住民の多くが戻ってこない」と語る。
資陽市は既に人口の21%超を65歳以上の高齢者が占める「超高齢社会」だ。建設業の男性は「ここで仕事をしても、お金が払われないことがある」と打ち明ける。財政も逼迫(ひっぱく)しており、同市関係者は公務員の給与支払いが遅れたこともあると証言した。
政府活動報告は、コロナ禍で打撃を受けた景気の回復に向け、財政出動を拡大させると強調する一方、財政赤字は対GDP比で3%以内と微増にとどめる方針を示した。資陽市の関係者は「どこに支出を増やせるだけの財源があるのか」と首をかしげた。(雲南省箇旧市、四川省資陽市=中国=時事)