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硬軟織り交ぜ分断狙う 台湾総統選へ揺さぶり―中国

2023年03月10日07時08分

中国の習近平国家主席(共産党総書記)=5日、北京(AFP時事)

中国の習近平国家主席(共産党総書記)=5日、北京(AFP時事)

  • 中国共産党序列4位の王滬寧・政治局常務委員(右)と会談する台湾最大野党、国民党の夏立言副主席=2月10日、北京(国民党提供・時事)
  • 台湾の蔡英文総統=1月6日、台湾・嘉義基地(EPA時事)

 【北京、台北時事】2024年の台湾総統選をにらみ、中国が硬軟織り交ぜた手法で台湾世論の分断を図り始めた。習近平国家主席(共産党総書記)の狙いは、「台湾独立勢力」と敵視する民進党政権に代わり、中国に融和的な国民党政権が復活することだ。習氏は今後5年間の3期目任期中に、台湾統一に向けた道筋を付けたい意向とみられる。

「27年までに米介入抑止」 中国、台湾有事へ戦力構築―米情報機関報告書

 「『独立』反対・祖国統一促進を貫き、祖国の平和統一への道を歩む」。5日の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)開幕式で公表された政府活動報告では、「平和統一」の文言が4年ぶりに復活した。報告のトーンは比較的穏健で、「武力行使」には触れなかった。
 習氏は22年10月に開かれた党大会では、統一に向けて「武力行使を決して放棄しない」と表明。同年12月と今年1月には2カ月連続で、台湾周辺の海空域で軍事演習を行って威嚇した。
 一方で中国は2月、台湾最大野党、国民党の夏立言副主席を招いた。共産党序列4位の王滬寧・政治局常務委員が応対し、両党の緊密ぶりをアピール。総統選が近づけば、台湾の有権者を意識して、国民党候補の追い風となるように経済協力の拡大に動くことが考えられる。
 こうした「国共接近」を与党・民進党は警戒。同党関係者は「中国の軍事的脅威にさらされながら対中融和的な国民党に負けるわけがない、と高をくくると痛い目に遭う」と自戒する。
 蔡英文総統は、中国が掲げる「一つの中国」原則を認めず、統一でも独立でもない「現状維持」路線を訴えて幅広い支持を集めてきた。ところが、民間団体「台湾民意基金会」が1月に実施した世論調査では、蔡氏の対中政策を「満足」と答えた人は38.5%にとどまる一方、「不満」が49.5%で上回った。同党関係者は「『民進党は現状を維持できていない』という不信感が広がり始めている」と危機感をにじませた。
 米中対立の激化で台湾海峡の緊張が高まる中、台湾の人々の不安は増した。国民党は選挙戦をにらみ「蔡政権は米国の言いなりになって台湾の若者に戦争をさせようとしている」と非難を強める。
 圧力をかければかけるほど台湾の人々が反発し民進党を利すると、中国は過去の総統選で学んでいる。台湾淡江大の張五岳副教授は「米台関係で重大な変化が起こらない限り、中国は今の(融和的な)立場を維持する」と予測した。

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