岸田政権、「原発活用」にかじ 新旧閣僚に聞く―東電福島事故12年(2)
2023年03月09日07時09分
◇原発回帰「安全神話そのもの」=エネルギー危機に悪乗り―立憲・枝野氏
◇安定供給・脱炭素へ原発推進=処理水放出「理解得たい」―西村経産相
―岸田政権の「原発回帰」方針の評価は。
エネルギー価格の高騰に悪乗りしている。電力は供給されないと困るので適切な情報提供が必要だが、イメージだけで国民を意図的にミスリードしている。今回の方針転換で足元の電気料金が下がるという因果関係は全くない。原子力に頼らずに、中長期的には再生可能エネルギー導入で脱炭素化は可能だという世界の流れに逆らっている。
―政府は電力逼迫(ひっぱく)を訴えている。
東京電力福島第1原発事故後、民主党政権で私が経済産業相だった2011年冬や12年夏の厳しい状況と比べると逼迫度合いが全然違う。あの時は、停止していた関西電力大飯原発3、4号機(福井県おおい町)の再稼働を決断せざるを得なかったが、今の政府は実態以上に不安をあおっている。
―原発の「60年超」運転を認める政府方針は。
原子炉内は実際に見られないし、触れられないし、近づけない。見てチェックできた中央自動車道笹子トンネルでさえ、経年劣化で12年に天井板崩落事故を起こした。原子炉は安全サイドに最大限寄せないといけない。根拠もなく安全基準を緩めるのはあり得ない。現行ルールの「原則40年、最長60年」でも危ないのだから、できるだけ早く運転を止めるべきだ。もう世界最高水準の安全規制などと言わないでもらいたい。
―原発の建て替え推進は。
(原発事故後の安全対策などで)原発の建設コストは50年前と比較にならないほど高くなっている。高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分コストも分かっていない。政府は「革新軽水炉」を導入するというが、原発は水と外部電力が止まったら終わりだ。何が起きても原子炉を冷やし続けることができるのか。一番のリスクは北朝鮮のテロ攻撃だ。科学的根拠もなく安全基準を緩め、事故リスクを抱えながら新しい原発を建てるなんて安全神話そのものだ。
―「脱原発」をどう進めるべきか。
原発推進は、大規模集約型の発電所を保有する大手電力会社を守ることにつながる。小規模分散型の再エネの拡大を進めるべきだ。人口20万人くらいで、住宅の一軒一軒の屋根が太陽光発電となり、それが一つの完結型のネットワークとなって全国につなげればいい。電力大手におもねることで再エネ導入が遅れ、失われた10年となった。